なんかセコムがつきました。

着せ替え人形は楽しいものだ ページ12

「むーん…二人とも国宝級の顔してるから服が霞む…」

「どんな顔ですかそれ」

「世の女の子が大好きな顔立ち。んー…鬼灯さんは色深い服の方が似合うし、碧は色淡い服の方が似合うし…真反対だねえ」


選び甲斐があるけど、と私は立ち並ぶ数々の洋服を見上げた。

鬼灯さんはともかく薬売りさんをそのまま呼ぶのも現代日本的に怪しいし、と仮の名前として彼を碧、と呼ぶことにして、それから謀らずとも同棲することになったのだから敬語を使うのも妙だろうとタメ口で。言うて鬼灯さんは敬語だけど薬売りさんは私に合わせてくれることになった。

提案してきたのは鬼灯さんだったけれど私も案外順応できていて、さしたる違和感なく彼らと接していた。ちなみに薬売りさんの名前を決めたのは私である。


「二人とも洋服を着せるのが勿体ないほど和服が似合うけど洋服は洋服でとても似合う…ううーん！イケメンのスタイリスト難しい！」

「適当で良いですよ、適当で。」

「鬼灯さんなんかは結構面白がってダサT着てたりするぞ」

「え、それ見たい。ダサT着て欲しい」

「嫌です」


自分からは着るくせに頼まれて着るのは嫌なのかこの天邪鬼め！

……そもそもの問題、鬼灯さん額に一本角生えちゃってるから角隠しの帽子が手放せないんだよなあ。幾ら鬼灯さんが和服似合うって言っても流石にキャスケットと着物は……私はわりと好きだけど第三者から見ると多分浮くからなあ。


「……ダサくて良いならお揃いパーカーとか着てみたい…あーでも鬼灯さんも碧もカーディガンとかも似合いそう〜！」

「…意外と楽しそうに洋服を選びますね。」

「ね。楽しそうで可愛いですが」

「自分の服より人の服選ぶ方が楽しい！」


特にモデルがとびっきり良いと妄想が捗る！

わくわくしながらあれやこれやと洋服を手に取っては鬼灯さんや碧に当てがう。鬼灯さんは相変わらずの素面顔だけれど抵抗しないし、碧はどこか楽しそうにしている。


「やっぱりイケメンにやらせて楽しいのはー…萌え袖！」

「萌え袖。」

「袖が長くて手のひらが隠れるようなやつだな。」

「それ！流石碧！」

「ふふふ…」


こういうの、と袖が長いカーディガンを手に取って見せる。

色んな作業を自ら行う鬼灯さんには多分袖が長いのは邪魔だろうと碧に着て欲しいと無言の要求をすると、彼は可笑しげに笑みを零して私の手からカーディガンを受け取った。

好意というものは諸刃である→←良ければ私を見ていてください

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す