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seven ページ8

『伊、作…』

できる限りの声で、私は伊作の名前を呼ぶ。伊作は涙目になっていた。

「…ごめん…ごめん」

泣かないで。泣かないで。痛くないから。痒くもないから。こんな傷、すぐ治るから。

「伊作くん、ちょっと」

突然私を助けてくれた人が、伊作を私から遠ざけて血を止めようと使っていたタオルをはがした。

「ちょっ、利吉さん!?」

「君たち、焦っていて気がつかなかったようだけど…これは毒だ」

「何ですって!?」

「匂いもない毒だ。その証拠に、ほら。Aの方の傷の奥が、紫色に変色している」

どうやら、利吉さんも今気が付いたようだ。

「まずは毒抜きからだ…痛いけど、我慢するんだぞ?」

利吉さんは私の肩に口を近づけると、なんと毒を吸い出した始めたのだ!途端に激痛が走り渡る。

『あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!!!!』

「っ…痛々しいよ…」

あまりの痛さに利吉さんの腕を引っ掻いてしまった。マジでごめんなさい。

『ん"ん"ん"ん"ん"!!!!!!!!!!』

ガリッ!!

「い"っ!?」

「利吉さん!血が!!」

「伊作!!!今は健康な私よりも!!重体患者のAを助けるのが先じゃないのか!!!」

利吉さんの怒鳴り声よりも、今は痛みの方が勝ちまくっていた。そして、下を噛まないようにと布を

噛ませられる。でも、あまりの痛さにその布もビリビリと破り噛み砕いた。

「…ふぅ…毒は吸い出したよ…後は安静に寝ておくだけだ」

私は利吉さんを見ると、そのまま気絶した。

【利吉sid】

Aは静かに眠ると、女の子らしい寝息を立てていた。

「伊作君、この子は…放って置くと1人で突っ走るタイプだ…君が見ておきなさい」

「…私には、無理です……利吉さん!!お願いします!!Aを、もうこれ以上の苦しみを与えないように…見ていてくださいませんか?」

伊作君は私にそう言うと、涙を流した。

ああ…この子は、本当に人の死を見たくないのだな。

「…分かったよ…じゃあ、私はこれで」

私は承知し、その場を後にした。

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作者名:朝霧 | 作成日時:2022年3月21日 17時

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