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二日目のオーケストラ部文化祭公演は盛大な拍手の元成功を収めた。
柳原夕実の急な欠員に最初は不満があった客席も、曲が進むに連れ穏やかに耳を傾ける様になった。立派に彼女の代理を務めたみやちゃんに、最後個人的なアンコールが来たくらいだ。
私は、舞台上で涙ぐみながら手を振るみやちゃんを袖からそっと見守っていた。シフトの関係上最初からは居られなかったが、終わり迄には間に合って良かった。
手が痺れる程拍手をし、少し落ち着いた頃、ふと横に視線が向く。関係者しか入れない其処に、今回お願いした強力な助っ人が立っていたのだ。
其の人物にゆっくりと近付き、彼が私に振り向いた瞬間立ち止まって頭を下げた。
「本当に、今日は有難う______________赤司君」
「南か、御苦労」
顔を上げろ、と言われて目に入ったのは穏やかな微笑み。
部活では決して出さない、教室で振る舞う物とも違う、見た事ない様な表情だった。
講堂が暗く、仄かに光る照明の所為で有ろうか。
優しく掛けられた労わりの言葉で、どきりと胸が高まる。
動悸を振り払う様にぶんぶんと首を振り、私は何もしていないと返す。
「赤司君が居てくれて、本当に助かった」
精一杯微笑み返すと、赤司君の目尻が下がりより一層優しそうな表情へと変わる。
………………可笑しい。
如何して、彼は此れ程迄に柔和な態度なのだろうか?
最近赤司君も私も忙しく、お互い面と向かい合って話したのは久し振りだ。
此処数日で何か心境の変化でもあったのだろうか。
知らない人と対峙しているみたいで、違和感が残るのに不思議と不快感は無かった。
………………そう言えば。
赤司君は、二重人格者だったっけ。
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nome(プロフ) - あまねさん» 返信大幅に遅れて申し訳ありません。楽しみにして頂けてとても嬉しいです!更新はのんびりとお待ち下さいm(__)m (2018年3月18日 11時) (レス) id: 981a85eb0c (このIDを非表示/違反報告)
あまね - この作品大好きです(*^^*)更新を楽しみに待っています!! (2017年5月7日 19時) (携帯から) (レス) id: 743e4dcd22 (このIDを非表示/違反報告)
nome(プロフ) - みずあいすさん» そうなんですね!仲間だと知れて心強いです(`・ω・´)私は行きたい大学がありまして、かなり難関なので気合いを入れたくて(笑)お互い頑張りましょう〜!! (2017年4月6日 20時) (レス) id: 1efffa79be (このIDを非表示/違反報告)
nome(プロフ) - こうちゃさん» 繊細……!勿体無いお言葉です、有難う御座います!何時もコメントに励まされておりますm(_ _)mお待ち頂ける事が最大限の励みです……!受験勉強に精一杯挑んで、戻って参ります!! (2017年4月6日 20時) (レス) id: 1efffa79be (このIDを非表示/違反報告)
みずあいす - 私も来年受験生です。辛い……。勉強とか考えてなかったので、正直現実を叩き付けられました、ありがとうございます。幸せなエンドを迎えられることを祈って!頑張ってください! (2017年4月5日 21時) (レス) id: 94c5760bdb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nome | 作成日時:2016年8月8日 16時