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「うーん…もうちょっとやと思うんだけどなぁ…」
「うう…」
見事に膨らまず萎んでしまった可哀想な生地たちの山が出来上がった。
見ていられずに顔を覆ってしまったAに鬱先生は苦笑いし、ゾムは可哀想なそれにジャムを付けながら揚々とつまみ食いをする。
常であれば怒られる手癖だが、今は消費してくれる要員として放置されていた。
「味は悪くないんやけどな。これもバターとジャムつければ普通に美味いし」
「せやね、じゃあ一旦休憩にしてこの山をどうにかしてしまおうか」
「せ、せめてお手伝いさせてください…」
申し訳なさそうに鬱先生の傍に寄るAの小動物感が、鬱先生の庇護欲を微かに掻き立てた。
それでも頭を撫でるわけにもいかず、笑いながら何でもないようなことのように笑って言う。
「ゾムも言うとったけど、筋は悪くないと思うで。失敗するやつはここでまず食えんものを創造するから」
「…え?」
「あー、あの狂犬どもか…あれは地獄やった…チャーハンがかわいそすぎて」
「別に食えんわけやないけどね、なんかジャンクっぽくて寿命縮めそうな味やった」
「それ体に悪いってことやん。大先生たまに舌馬鹿になるよな」
「失敬な、シャオちゃんへの愛故や」
「シッマにはそういうのないんか」
「逆にシッマへの愛なんてあると思う?殺意しかないわ。あいつほんま言わんでええことまでべらべら喋りよって」
「それはネタを提供する大先生が悪いんちゃうか」
「あのなゾム先生?僕はコネシマくんにネタを提供するために生きとるんちゃうで?大真面目なんやで?」
「大真面目でネタを提供する大先生マジ尊敬。真似したないけど」
「お前にも殺意しか沸かんわ」
雑談をしながらも止まらない鬱先生の手を一生懸命に見つめるAに、トリシアが時々小声で耳打ちしている。
どうやらアドバイスと説明をしているようだと気づいた鬱先生はゾムとの会話を止めてAに話しかけた。
「Aさん、そんなに見られたら僕の手穴あいてまうで」
「あ、すみません…あまりの手際で」
「ははっ、ええよええよ、普段こんなに褒められとらんからめっちゃ嬉しいわ」
「それはすぐガバる大先生のせいやろ」
「お前やってたまに脳みそ溶けるくせに」
「うっさい」
「がば…?」
「お二人とも、A様に変な言葉を覚えさせないでください」
「Aさん、今すぐその言葉は忘れるんや。高貴なお方が使っていい言葉やない」
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作者名:乃鴉 | 作成日時:2020年6月24日 19時