嘘偽りない、本音【1】 ページ31
Knightsのメンバーと親睦を深めるために食事までした帰り。泉くんが送るとしつこく言ってくれていたがなんとか断った。
「そんなに暗くないんだから1人で帰れるし……」
そんな事を1人呟くが夕暮れに消えていった。そろそろお兄ちゃん疲れしてきた。周りにお兄ちゃんが多すぎる気がするんだよね。
「A、」
「レオくん？今日は外出れたんだ！」
「やっぱり夢ノ咲に来たんだな」
調子が良かったのか家の近くだから出られたのか定かでは無いが、レオくんに偶然会った。嬉しくて思わず駆け寄ろうとしたけど、その一言で足を止めてしまった。
忘れてた。今制服だ。レオくんは難しい顔で私を見ていた。
「レオくん、怒ってる？」
「おれ反対したよな？アイドルだけはダメだって」
「それは……うん。ごめんなさい」
確かに兄達とレオくんには反対されてた。けれど泉くんから勧められ、私自身も変わりたいって気持ちもあったからアイドル科に転校する事を決めた。その気持ちに嘘偽りは無いと自信を持って言える。
「なんでアイドルになりたいんだ、Aは」
「周りに反対されてる事は分かってる。だからこそ見返したいの。私だってアイドルになれるって」
「……帰るか」
「レオくん……」
真っ直ぐレオくんの目を見て答えた。けれども納得していないようで、無言で手を繋がれ帰宅する事になった。
どうしたらいいんだろう。どうしたらレオくんが納得して、戻ってくれるんだろう。昔だったらもっと怒ってたと思う。なのに今は怒る事は減り、部屋から出る事も減った。
「レオくん、ごめんね」
「なんで謝るんだ？Aが決めた事なんだろ？」
「反対、しないの？」
「もう少し、待ってくれ。そしたら……」
再度謝ると、納得はしてくれていたようだ。それ以外は焦らせる気は全くない。もう少し待ってとはなんの事だろう。
そして私の家の前で足を止めるかと思えばそのまま入ろうとしているレオくんがいた。
「レオくんあの、何か用事あった？」
「Aのご飯食べたい」
「……うん。わかった」
やっぱり今日はちょっと調子良いみたい。私の作ったご飯なら食べられるって事なのかな。お母さんの料理じゃなく？そこは疑問だし、あんまり私に依存し過ぎても問題な気がする。
それでもレオくんの言葉に嬉しくなり、彼からは見えないだろうけど笑顔になるのが自分でもよくわかった。レオくんが喜ぶご飯はなんだろう。そう考えながら後に続いて帰宅した。
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作者名：のあ | 作成日時：2022年6月8日 0時
