お暇しないで下さい side銀さん ページ4
【銀さんside】
「――あー、とりあえずアンタ、名前は」
俺がそう切り出したのは、依頼主がここを訪ねてきてから数分が経過した頃だった。先程淹れた茶はまだ湯気を立てている。
女はなんでもないように口を開きかけ、しかしそこで一瞬ハッとしたような顔をしたかと思うと。
「Aです」
「……なるほど、Aサン。俺ァ坂田銀時だ」
自己紹介で苗字を秘匿したがるのはあざとい女かそもそも苗字のない天人か、お家の事情がとかいう奴らだけだ。依頼主は一見する限り前者二つではないように思える。
(…ってことはアレか。)
つまり――どうやらそいつは、苗字を秘匿せねばならねェような事情を抱えているのか。
今そのあたりに深く突っ込むことはせず「んで、依頼ってのは」と本題へ入る。Aは安堵したような顔で一度息を吐き、しかし少しだけ気の抜けた顔で「あ、でも、」と。
「…すみません、依頼の前に確認したいことがあるんですが」
「あ?…あぁ、どーぞどーぞ」
「ありがとうございます。じゃぁ遠慮なくいきますね。――…万事屋さん、真選組に恨みはありますか?」
「……はァ?」
――その質問の内容があまりにも予想外で、素っ頓狂な声が漏れた。……なんだ、……真選組?
聞き覚えがあるにも程がある名前に自然と眉根が寄っていく。まさかこんなところでその名を耳にすることになるたァ。
こんな質問するあたり依頼主も真選組に関連した人間なんだろうが、敵側なのか味方側なのかわからねー限り俺も正直に答えるしかなく。
「……まァ、恨みがねェといったら嘘になるな」
頭に今までのそいつらの姿を思い描きつつ言った。今にも反吐が出そうだ。
依頼主は俺の声を聞き、満足そうに数回頷いたのち―――…、
「お暇します」
「ちょっと待ってェェ!!?」
――しくったァァァ!!真選組側の人間だったァァアア!!
冷や汗全開で居間の入口に立ち塞がり、出て行かんとする依頼主の行く手を阻んだ。Aサンとやらは「どいてください万事屋さん」と怪訝な顔をしており。
「いや待て!間違えた!俺チョー好きだよ真選組ィ!」
「さっき恨みがないと言ったら嘘になるって凶悪ヅラで言ってましたよね」
「んなもん目の錯覚に決まってんだろコノヤロー!ファンクラブ入るぞコラ!」
俺を見上げるそいつの目は『お前を怪しんでいる』と物語っていた。だがこちらも生活がかかっているのだ。絶対に負けられない戦いである。
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中村(平日浮上なし)(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!お陰様で一巻完結とさせていただきましたヽ(*´∀`)ノ亀更新にお付き合い頂きありがとうございます!!嬉しいお言葉も沢山頂けて嬉しい限りです…!! 次巻では多少進展させられると思うので…よかったらまたよろしくお願いします!(^^ (2017年2月11日 21時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - お疲れさまでした!次巻も拝見させて頂きます! (2017年2月11日 20時) (レス) id: 20b4c6b7f5 (このIDを非表示/違反報告)
主任(プロフ) - 中村さんの作品いつも楽しみに見させていただいております(^_^)今回も最高でございます…また生きる糧を頂戴致します(^_^) (2017年2月11日 19時) (レス) id: 55077c071d (このIDを非表示/違反報告)
唯月 - 凄く面白いです!更新は大変だと思いますが、これからも頑張って下さい!応援しています! (2017年1月28日 22時) (レス) id: 9cd5d172ad (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 私も田舎の方に住んでるので何かと共感できる部分が多くて嬉しいですw銀さんが用心棒……心強いですね。これからの展開が楽しみです。 (2017年1月28日 22時) (レス) id: b4895c0cf1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2017年1月4日 20時