夢桜５* (ページ47)

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「どうして・・・」

「お嬢・・・裏切ってごめん。

怖かったよね。・・・でも、こうするしか・・・なかった。

お嬢を・・・置いて・・・ここから・・・離れるつもりだった。

お嬢は、俺に・・・何をされても・・・嫌いにならないって。

そう言ってくれた。・・・俺は、そんなお嬢の・・・優しさに

甘えてしまったんだ。・・・俺のこと・・・嫌いになってくれないと

辛くなるから・・・。嫌いになってくれ・・・。

でも俺は・・・お嬢。いや、Aのこと・・・好きだから。

Aを・・・守って・・・死ねるのなら本望だ。

好きな人を・・・守れて良かった・・・。お嬢。好きだよ」

孝之さんはそう言ってすぐに、力が抜けた。

「孝之さん！頼ってくれって言いましたよね。俺のこと、

兄として思ってくれていいって。甘えてくれって。

孝之さんがいなくなってしまったら、あたしは和さんと

喧嘩したとき、相談できなくなっちゃいます。だからっ・・・」

大粒の涙が零れる。あたしが何を言っても、孝之さんが

返事をすることはなかった。

「止血・・・。止血しないと・・・」

あたしは孝之さんを床に横たわらせ、斬られた背中を

上にする。持ってきた布で患部を押さえつけ出血を止める。

「・・・兄貴。やっぱりこの女に惚れてたんだ」

声のする方を見ると、白風がいた。

白風の刀からは、赤い雫が垂れていた。

「白風」

あたしは白風を睨む。

「兄貴に愛されて幸せだね。兄貴も、愛する女を守って

死ねたんだ。光栄なことじゃないか。じゃあ、次は兄貴の後を追って

お前に死んでもらおうか」

白風はあたしに刀を振り下ろそうとする。

だが、その刀は和さんによって止められた。

「お前は本当に感情がないみたいだ」

和さんはそう言って白風の刀を弾く。

「A。孝之さんの手当を頼む。

俺らで白風を止める」

「わかりました」

泣いている場合じゃない。

あたしは涙を袖で拭って孝之さんの傷の手当をした。

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