夢桜５* (ページ19)

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「好きです」

ポロリともれてしまった本音。

あたしは急いで口を押える。

和さんもびっくりした顔をする。

「いや、すみません。今のは無かったことに・・・」

「・・・反則」

和さんは顔を赤くして、ため息をつく。

「そんな不意にね、可愛い顔で好きですなんて

言われたら俺の理性保たないよ。ここが公然の場で良かった。

まだ抑えが効くから」

和さんはあたしを強く抱きしめた。

「公然の場でできるのはこれぐらい。恥ずかしいだなんて

言っても離さないからね。Aが誘ったのが悪い」

突然強く抱きしめられてあたしも顔が赤くなっていく。

「・・・俺も好きだよ。愛してる」

耳元で和さんが囁く。

気絶しそうなぐらい顔が熱くなる。

言葉がでなくて、口がパクパク動くだけ。

体が離れ、和さんがニッと笑う。

和さんにはいつも敵わない。

「そろそろ向日葵に向かおうか。早いうちに用事を済ませて

帰ろう。」

「そうですね。向かいましょう！」

あたしは平然を装って言う。

「顔まだ赤いよ？照れすぎ」

小声で言う和さん。

誰のせいだと思ってるわけ・・・。

しばらく歩くと、向日葵という看板が見える。

いかにも、高級宿というのが分かる。

「まさかここの主人が依頼だとはねぇ・・・」

和さんは完全に仕事だと思い込んでいる。

実は仕事じゃないってことを知っているあたしは優越感に浸る。

宿の扉を開けて、中に入る。

「いらっしゃいませ。今夜、お泊り予定の二宮様でしょうか？」

優しそうな主人が出迎えてくれる。

「え？俺は依頼があると・・・」

「はい。そうです」

和さんが混乱して何も答えられない代わりにあたしが答える。

「お待ちしておりました。お部屋にご案内しますね」

「和さん。行きますよ」

あたしは和さんの手をひく。

「俺は依頼があるからここに来ただけで泊まりに来たわけでは」

「後で説明しますね」

和さんは首を傾げた。

「こちら、牡丹の間でございます。

本日は、温泉共々貸切となっておりますのでごゆっくり」

「ありがとうございます」