【文豪ストレイドッグス】私は待っていた

第二十四話 ページ26

　




芥川さんの羅生門が、

中島さんの虎化した腕が、


私の手足の鎖をちぎり、枷を壊していた。


訳がわからなかった。

だってこの部屋にも当然、異能力規制剤が焚いてある。

効果は出ているはずなのに…出せている。

無理矢理、と言った感じだ。


貴「…どう、して？」


私は呆然と自由になった腕を見た。

五年も枷を着けていたからだろう、手首は赤くなっていた。

…これ、いつか消えるのかな？

消えて…その頃には私は心も自由になれてるのかな？

想像したら…あぁ、素敵な未来ね。

とっても憧れてしまう。


芥「これで貴様の枷は無くなった」

貴「…酷いことをするんですね」

敦「え？
どうしてそんな…」

貴「だって、外に出ることを許されない私に希望を持たせた
気持ちのストッパーだった枷を、壊してしまった」


本当に酷い…。


貴「何も知らないくせに…」

中「だったら話せ」


少しイラついた声がした。

中原さんだ。

どうして怒っているの？

貴方には関係のないことなのに。


貴「ーー自分の異能力を使いこなせません」


悔しいな…本当にそう思う。

使いこなせていたら、こんなことにはなっていなかったのに…。


貴「私の異能力は精神操作もできます
だから、一歩間違えれば人を殺めてしまう

なのに、私は扱いきれていない
それどころか自身の精神状態が不安定だったら暴走もします」


言いながら少し考えた。

もし、ここに閉じ込められずに異能力の練習をしていたら…。

私は使いこなせていただろうか？


貴「…私は危険なんです」

敦「危険だなんて…そんな…」

貴「皆に迷惑をかけてしまう」


私は目を伏せた。

早くこの部屋から出てほしい。

でないと…。


貴「…私は誰にも迷惑をかけたくないんです
化け物だから…外には出られない」

太「君にその事を教えたのは誰だい？」

貴「…御主人様です」

国「そいつは家主の田中のことか？」


私はコクと頷いた。


貴「…それに、私は怖いの」


体が震えた。

部屋の寒さからではない。

恐怖からだ。


貴「ここから出られても、御主人様がずっと追いかけてきそうで…

いつ捕まるのか、ここへ連れ戻されるのか
暗い日常が戻ってくるのか…

そう怯えながら生きるのは嫌だ」


苦しい…胸の辺りが痛い。

怪我はしてないのに…なぜ？


どうして私はそんな事を言っているんだろう。

本当はありがとうって言いたい。

助けに来てくれて、ありがとうって。


…でも、言えない。

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