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村「これでまた会う頻度増えるな」
『…………うわ、そういう魂胆？』
村「勿論ちーに寂しい思いさせたないのはあるで」
信ちゃんのちーちゃんへの愛情は同じ猫飼いとして理解しているつもりだ。
一昨年の忙しない年末、ペットカメラで何度もちーちゃんの生活を確認していたのを覚えている。
そんなところに、ちーちゃんも一応は顔見知りの猫飼いの暇人が現れたんだから、信ちゃんにとっては好都合極まりないだろう。
口では邪な言い訳をしつつも、本当はちーちゃんの気持ちを最優先にしていることくらい、長年いる私にとって、読み取るのは造作もなかった。
『まあ、そういう事にしとくわ』
村「なんやそれ」
ご機嫌で信ちゃんはモクテルを流し込んだ。
『私も次はノンアルにしよかな』
村「気にせんと飲めよ。今日はデート兼、アイドルお疲れ様会やから」
『なにその可愛い名前(笑) 』
モグモグといっぱいにピザを詰め込む彼の口がニンマリと釣り上げられた。
村「28年よく頑張りました会でもええぞ」
『会言うても2人だけやけどな』
村「デートやからな」
『デートではないな』
バッサリと否定すると同時に彼の心境を想って、若干良心が痛む。
それでも、私はこれをデートとは認められない。
デートだなんて、まるで恋仲に発展する可能性のある男女のお出かけのような、そんなこと。
私と信ちゃんの間にはありえないのだ。
それとなく目を伏せて、私はキッパリと想いを口にした。
『絶対に付き合えへんって言うたやん』
村「でも俺が好きやって言う分にはなんの問題もないやろ？」
『……まあ』
曖昧に頷けば、信ちゃんはホッとしたように頬をゆるめる。
村「好きやで、ニシ」
切実な告白に、苦い水滴が心を濡らす。
虚しかった。応えてあげられない自分も、無鉄砲に歩み寄ってくる信ちゃんも。
『……今の告白は何回目なん』
村「3かなあ」
『3日前のと？』
村「2日前にほら、付き合おって言うたやつ」
『そっか』
あと7回。あと7回耐えれば、信ちゃんは諦めてくれるだろうか。
他に幸せを探してくれるだろうか。
『でもまあ今日はなかなかお嬢様気分で楽しいから許すわ』
村「何をやねん」
それはそれで嫌だな、なんて馬鹿みたいな執着心が溢れてくる。
アイドルを辞めても、結局信ちゃんに甘やかされたい甘ったれなのだ、私は。
パスタにフォークを突き刺して、くるくる巻いているうちに、私の思考もぐるぐると底へ落ちていった。
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作者名：藻くずちゃん | 作成日時：2022年9月28日 16時
