第xxx夜 今世のこの時、終わるまで ページ40
僕の人生はきっと、うんと恵まれててうんと幸せなものだった。
「A、君もずっと辛かっただろう?もういいんだ、一緒に“普通”に生きよう」
僕より幾分か背の高く筋肉のついた腕が抱きしめる。
「ね、僕も一緒だから何も怖くないさ」
アラジン達と聖宮から帰ってきてみれば、世界は死に絶えようとしていた。
聖宮に行くと啖呵を切るアラジン達に。
『何が起こるか分からない未知の領域に共に来て戦力になってほしいんだ。お姉さんはアルマトランでうんと強かっただろう?百戦錬磨のAお姉さん』
と、ぐいぐい来られたらそれはもう首を縦に振るしか道はなかった。
逃げれなかったのよ!だって周りにはアリババくんもジュダルも白龍くんも居て四方八方を文字通り囲まれてたからね。
狩られる獲物の気持ちって、きっとあんな感じなんだ…。
『アルマトランの軍師殿、どうかご同行をお願いしたい』
貴女の戦略を、その頭脳をお貸しください、と白龍くんの強めのプッシュで僕はもう遠い眼差しをしてたと思う。
白目剥いてたねアレ、そんな僕を指さしてゲラゲラ笑ってたジュダルの頭は1発殴っておいた。
んでまぁ、後輩の頼み事を断ることすらできずに同行。
ちゃんとみんなで生きて帰還してみれば、世界は洗脳され『共にルフへ還ろう』と皆口々に言っていた。
「一緒に生まれ変わって、戦いとは無縁の普通の女の子になっていいんだ」
ーー 一緒に、ルフへ還ろうーー
洗脳はユナンも等しくかかっていた。
抱きしめられた僕は、どうしたらいいか分からなかった。
腕は宙を彷徨っていた。
“普通” “戦いとは無縁”
その2つの言葉は僕を迷わせるには十分だった。
と、同時にすごく勿体ないと思った。
君ともっと一緒に生きたいと願ってしまった。
来世だけじゃ足りないんだユナン。せっかくこの世界で出会って一緒にご飯食べて旅をして、変なことに笑いながら一緒に生きてきたんだから。
残りの人生も全部、今世のこの時が終わるまで。
君と生きていきたい…。
「いやだ…」
「え…」
「来世だけじゃなくて、今この時もこれかれも!この世界が終わるその時まで一緒に生きて!」
彷徨っていた腕は彼の肩を掴んだ。
引き離せば、ユナンは今にも泣きそうな顔をして僕を見ていた。
後ろにいたアラジン達の元へ駆けていく。
僕はうんと幸せだった。
だけど、その幸せに後少し。
一滴でいいから君との今世の人生を加えさせてほしい。
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ララ(プロフ) - 未だに更新し続けてくれてるのがとても嬉しいです。千年彗星さんの言葉の表現がたまらなく好きです。 (9月10日 2時) (レス) @page40 id: 759c071471 (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - きくさぶなそれさん» コメントありがとうございます!だいぶ前に更新し返信いただけるなんて思ってもみなかったです。執筆止まっていますが、時間あれば書いていこうと思ってます、今後もお願いします。 (2021年12月11日 18時) (レス) id: bc8271a1c1 (このIDを非表示/違反報告)
きくさぶなそれ(プロフ) - 次更新したのが何億年先でも、気合で読んで見せますから!!完結まで見届けてやりますよ!!! (2021年12月11日 12時) (レス) id: 422828d005 (このIDを非表示/違反報告)
きくさぶなそれ(プロフ) - 一昨年位からはまり始めた作品で、今年も作品を更新してる。それだけでご飯が50杯くらい食べれそうなくらいうれしいです!更新頑張ってください!!!と言いたいですが、でもやっぱり作者さんの気持ちが一番大事!体を休めて気が向いたらこちらにいらしてください!! (2021年12月11日 12時) (レス) @page37 id: 422828d005 (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - 凛さん» コメントありがとうございます!楽しみだと言って貰えてとても嬉しいです、今後ともよろしくお願いします。 (2021年7月24日 14時) (レス) id: bc8271a1c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千年彗星 | 作成日時:2017年5月3日 0時