第221夜 人の性 ページ25
僕の持ってる本の一冊。
最後のページに作者のある言葉が記されてあった。
『辛くなると分かっているのに思い出してしまうのは、人の悲しい性だ』
「あれ? Aさん、眠れないんですか?」
ジュダルが誰より先に寝はじめ。
焚き火の見張りを僕とアリババ君で、交代で見ることになった。
さっき、見張りを彼と交代した所で。
枯れ木を探しに行っていたアリババ君が帰ってきた。
「ふふっ、ちょっと昔の事を思い出しちゃってさ」
露出の多い服を着て、僕の隣で爆睡をするジュダル。
ときどき身を縮ませるように小さくなる彼を見ていると、クロを思い出す。
いやいや、ジュダルは猫じゃないんだから。
確かに気ままな所とか猫っぽいとか思ったりしたけれども!
「また後悔してたんですか?」
「やだな〜、僕だって後悔ばかりしてるだけじゃないよ」
寒そうにするジュダルが少し可哀想に見えてきたから、魔法で羽織れるものを作って掛けてやる。
「レジスタンスにいた頃はね、人数の多さに物資が不足することがたまにあってね。特に、寝るときの掛け物とか足りなくてさ」
「Aさんの事だから、自分の分を誰かに譲って風邪ひいたんじゃないですか?」
「いや、ウーゴから奪い取ったからそれは無かったんだけど」
「…」
そう、自分より年下の子が寒そうにしてたので譲ってあげたのだ。
その子には、『僕は大丈夫!』なんて言ったんだけど。
思ったより寒くて全然大丈夫じゃなかった。
けれど、他の主力メンバーから取って風邪でも引いたら、翌日の戦いに支障がでるし。
だったら、1番支障がないウーゴから奪おうという素晴らしい考えにいたったわけだ。
ちなみに、兄弟思いなイスナーンも年下の子に譲って困ってた。
そのため、僕とイスナーンの2人で嫌がるウーゴから奪い取り、2人で一緒に寝た記憶がある。
でも何故か、翌朝には僕らの間にソロモンが割り込んでいて凄く狭かったのだ。
「それウーゴくん大丈夫だったんですか!?」
「あれれ? 思い出したらなんだか眠気が〜」
「逃げないでください!」
「次の日ウーゴは風邪をひいたよ、おやすみ〜」
「大丈夫じゃなかったんですね!?」
『辛くなると分かっているのに思い出してしまうのは、人の悲しい性だ』
けれど、たぶん間違ってる。
訂正するならきっとこう。
『辛くなると分かっているのに思い出してしまうのは、人の素敵な性だ』
過去を置いてけぼりにしないとても優しい行為だと、僕は思うから。
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ララ(プロフ) - 未だに更新し続けてくれてるのがとても嬉しいです。千年彗星さんの言葉の表現がたまらなく好きです。 (9月10日 2時) (レス) @page40 id: 759c071471 (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - きくさぶなそれさん» コメントありがとうございます!だいぶ前に更新し返信いただけるなんて思ってもみなかったです。執筆止まっていますが、時間あれば書いていこうと思ってます、今後もお願いします。 (2021年12月11日 18時) (レス) id: bc8271a1c1 (このIDを非表示/違反報告)
きくさぶなそれ(プロフ) - 次更新したのが何億年先でも、気合で読んで見せますから!!完結まで見届けてやりますよ!!! (2021年12月11日 12時) (レス) id: 422828d005 (このIDを非表示/違反報告)
きくさぶなそれ(プロフ) - 一昨年位からはまり始めた作品で、今年も作品を更新してる。それだけでご飯が50杯くらい食べれそうなくらいうれしいです!更新頑張ってください!!!と言いたいですが、でもやっぱり作者さんの気持ちが一番大事!体を休めて気が向いたらこちらにいらしてください!! (2021年12月11日 12時) (レス) @page37 id: 422828d005 (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - 凛さん» コメントありがとうございます!楽しみだと言って貰えてとても嬉しいです、今後ともよろしくお願いします。 (2021年7月24日 14時) (レス) id: bc8271a1c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千年彗星 | 作成日時:2017年5月3日 0時