第218夜 陰膳 ページ22
主がここを旅立ってから数日が経過した。
主がいないと、心にポッカリと穴が開いたみたいな…、何とも言えない気持ちになる。
それはクロも同じみたいで…。
「ニャ〜」
「なんだいクロ…、またAを呼んでいるのかい?」
主が出て行ったドアの前に座り、ひたすら主を呼ぶ鳴き声。
主が旅立った日からずっと、そこに座り呼んでいる姿はとても悲しそうに見えた。
「ほら、こっちにおいで…。夕ご飯にしよう」
ドアの前で座るクロをマギ様が腕に抱えて、テーブルの下に持ってくる流れは、もう習慣化している。
「シトラー、料理を運ぶのを手伝ってくれるかい?」
「もちろんです!」
生前、ライ様が使っていた杖。
つまり、主の金属器。
それを拭いていた手を止める。
毎日欠かす事なく、主も拭いていた。
それほど大切で、綺麗に保っておきたいものなのだ。
「ふふっ、その杖はそこの棚に入れるといいよ」
マギ様に言われたとおり棚に入れて。
「はぁ〜、それにしても主は大丈夫なのでしょうか…」
テーブルの上に、作られた料理を並べていく。
「それは故郷からの付き合いである君が一番知っているんじゃないのかい?」
「そうですけど…」
「彼女は、僕らが思っているよりしっかり者だよ」
けれど、心配したところでどうにもすることができないのが現状で。
「強くて勇敢で、それでいて優しい…。そんな僕らの王がそんなに信用できないかい?」
「うっ…」
「君はちょっと心配性だね」
そんな会話をしながら夕ご飯の準備が整う。
クロには主が魔法で作ったクロ専用のお皿に、マギ様が焼いた魚。
少しいびつな形をしたクロ専用のお皿。
そのいびつさは見るたびに何だか笑えてきてしまう。
「さぁ、心配していてもしょうがないよ。ご飯が冷めないうちに食べようか」
「ふふっ、マギ様がそこまで言うなら大丈夫かもしれないですね!」
空腹を感じないジンである私にも、こうやってご飯を作ってくれる優しさを噛み締めながら食べていると。
ふと、用意された夕ご飯が1人分多いことに気づく。
「それはね陰膳だよ」
「かげ、ぜん…?」
「そう。旅の人の無事を祈ってやるものさ…。まぁ願掛けみたいなものかな」
「ふふっ! こんな素敵な陰膳なら、主は大丈夫ですね!」
「ふふっ、そうだね」
ーー
一方、その話題である当の本人…。
「ひ、ひもじい…。お腹すいた無理。
死んじゃう…、誰か助けて…」
地面を這い蹲りながら餓死しかけていた。
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ララ(プロフ) - 未だに更新し続けてくれてるのがとても嬉しいです。千年彗星さんの言葉の表現がたまらなく好きです。 (9月10日 2時) (
レス) @page40 id: 759c071471 (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - きくさぶなそれさん» コメントありがとうございます！だいぶ前に更新し返信いただけるなんて思ってもみなかったです。執筆止まっていますが、時間あれば書いていこうと思ってます、今後もお願いします。 (2021年12月11日 18時) (レス) id: bc8271a1c1 (このIDを非表示/違反報告)
きくさぶなそれ(プロフ) - 次更新したのが何億年先でも、気合で読んで見せますから！！完結まで見届けてやりますよ！！！ (2021年12月11日 12時) (レス) id: 422828d005 (このIDを非表示/違反報告)
きくさぶなそれ(プロフ) - 一昨年位からはまり始めた作品で、今年も作品を更新してる。それだけでご飯が５０杯くらい食べれそうなくらいうれしいです！更新頑張ってください！！！と言いたいですが、でもやっぱり作者さんの気持ちが一番大事！体を休めて気が向いたらこちらにいらしてください！！ (2021年12月11日 12時) (レス) @page37 id: 422828d005 (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - 凛さん» コメントありがとうございます！楽しみだと言って貰えてとても嬉しいです、今後ともよろしくお願いします。 (2021年7月24日 14時) (レス) id: bc8271a1c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千年彗星 | 作成日時：2017年5月3日 0時
