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第214夜 傷つくのは誰? ページ18

彼は、ユナンは知っているはずだ。

眷属器が使えなくなった意味を。


「言ってあげなよユナン」


そしてそれが、このファナリスの子にとって受け止めがたい現実であることを。


呼吸が安定して、ふらつきも無くなったモルちゃんから手を離す。
僕らの会話の意図が分からない彼女は、僕とユナンを交互に見て混乱している。


「そんな不確かなことは言えないよ」

「不確か…?」


そんな会話をしながらも、距離を詰めてくるユナン。

不安がるモルちゃんを安心させるために、いつもの笑みを浮かべている。


「ユナン…。君は耳がいいから聞き間違いなんてするはず無いと信じてる」

「そうだね…、聞き間違いは少ない」

「じゃあ、さっきモルちゃんからしてもらった説明。この子がここまで来た理由を聞いたでしょ?」


このファナリスの子は、主であるアリババくんが戦闘にて重症。
命の象徴であるルフが見つからない。
どうにかできないか、と言ってきた。


「もしかしたら、眷属器が発動しないのは、金属器がアリババくんの側にないからかもしれないねモルジアナ」


だから、金属器の主であるアリババくんが死んだ。なんて不確かなことは言えないってことかい?


「ふっ…、何をバカなことを」


モルちゃんの話から推測するに、眷属器が発動しないのは金属器がどうたらの問題じゃない。

金属器の持ち主が死んだんだよ。


「バカでも何でも。これは彼女自身の目で確かめることだA」


そんな事を目の前に来たユナンは僕に向かって言った。

そして僕の肩に手を置いて、モルちゃんから引き離すようにグイッと肩を押される。


「うあっ!!」


ユナンだって男性なのだ。
そんな彼の力に前のめりになって、思わず転びかける。


「もうやめてください…!!」


シトラーの懇願するようか声が僕の耳に届く。
そして、すかさず振り返るが、そこにはもう2人の姿はなくて。


「やられた…」


何も知らないファナリスの子は。
これから知る現実を受け止めなければならなくなった。

なんの心の準備もないまま、大切な人の亡骸と対面するのだ。


「ユナン!! ありもしない未来に希望を与え続けることは愚かな行為!! それで傷つくのはそのファナリスの子だ!!」




存在し得ない未来に夢を見て。

現実を知って絶望する。

でもきっと、これは夢なんじゃないかと思うのに。

やはりそこに、愛する人はいないのだ。






「真実は…。早く知れば知るほど、心への傷は浅くて済むんだよユナン…」

第215夜 友の泣き顔→←第213夜 僕とユナンとファナリスの女の子



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ララ(プロフ) - 未だに更新し続けてくれてるのがとても嬉しいです。千年彗星さんの言葉の表現がたまらなく好きです。 (9月10日 2時) (レス) @page40 id: 759c071471 (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - きくさぶなそれさん» コメントありがとうございます!だいぶ前に更新し返信いただけるなんて思ってもみなかったです。執筆止まっていますが、時間あれば書いていこうと思ってます、今後もお願いします。 (2021年12月11日 18時) (レス) id: bc8271a1c1 (このIDを非表示/違反報告)
きくさぶなそれ(プロフ) - 次更新したのが何億年先でも、気合で読んで見せますから!!完結まで見届けてやりますよ!!! (2021年12月11日 12時) (レス) id: 422828d005 (このIDを非表示/違反報告)
きくさぶなそれ(プロフ) - 一昨年位からはまり始めた作品で、今年も作品を更新してる。それだけでご飯が50杯くらい食べれそうなくらいうれしいです!更新頑張ってください!!!と言いたいですが、でもやっぱり作者さんの気持ちが一番大事!体を休めて気が向いたらこちらにいらしてください!! (2021年12月11日 12時) (レス) @page37 id: 422828d005 (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - 凛さん» コメントありがとうございます!楽しみだと言って貰えてとても嬉しいです、今後ともよろしくお願いします。 (2021年7月24日 14時) (レス) id: bc8271a1c1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:千年彗星 | 作成日時:2017年5月3日 0時

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