第157夜 世界の基準に合わせましょう ページ10
「おろしてフォカロル!! 今日は宴をやるから準備しないと」
帰還祝い含め、これからの第7基地への発展を祝して開こうと皆に準備をさせていたのだ。
言った本人が準備に参加せず、宴だけっていうのは少し気が引ける。
「はぁ…、女性に振り向いてもらえないとは思ってもみませんでした」
「ん? 」
そう言い、優しくおろしてくれる彼の頭を撫でる。
「1人の女性を想うのがこんなに苦しいとは」
「君にはもっといい人がいるよ!! 僕なんかより100倍、それ以上の人がね!!」
彼に手を振りながらそう言い残し、第7基地へと駆けて行く。
見上げた空には薄っすらと月が出ていて。月といえば、セバスチャンが話してくれるあの物語の続きってどうなるんだろう…とか思うのだ。
太陽の王は、その衰えぬ輝きで皆を導く。
月の王は、光は淡くとも1度目にしたら忘れられない輝きを持っている。
「A様! A様!」
「最高守護神殿!!」
「んー。どうしたの? シトラーにアモン」
「貴女様は宴に参加しないのですか?」
「参加してたよ?」
「戻らないんですか?」
「どうしようかな…」
宴の真っ只中、こっそりと抜け出して来たつもりが見つけられてしまったらしく。
「なんかさ〜。時の流れって残酷だな〜って」
ゴロンと寝転がっている此処は、かつてザガン達と花の種を植えた場所で。時を経て、色とりどりの花が咲き乱れていた。
「残酷…、ですか」
「そうだよアモン」
7年前までは知らない知恵を話せば興味を持ってくれたソロモンも、今ではそれが怖いと言う。
「いいですかな初代」
その場で正座する2人に、思わず僕も身体を起こし正座をする。
「知恵は人を助け、軍師としてずば抜けて才能のある貴女様には宝物も同然かもしれませぬ」
「ですが初代、よく覚えておいてくださいね?」
何時もと変わらない笑顔を浮かべるシトラーと、長く伸ばしてあるヒゲを弄るアモン。
「知恵は時に、人の恐怖心を煽ることもあるのです。己の知らないことを知っている者がいる。それはとても恐ろしいことなのです」
「でも、僕が知ってるのは許容範囲でしょ?」
「いいえ、初代。ご自分では気づいてないかもしれませんが、貴女様と七魔導士団の方々は知りすぎてしまってるのです」
僕達のこの知恵は、世界のことを知りすぎてしまっているというのだ。
「貴女様の身を守る為にも。この世界の基準に合わせることをお忘れなく」
煌々と輝く月の下。
少し生きずらいと感じてしまう僕がいた。
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千年彗星(プロフ) - 夢雪さん» 読んでいただきありがとうございます! そして泣いてくださるなんて…! アルマトラン編を好きと言ってもらえて嬉しいです、ありがとうございます! (2018年3月25日 20時) (レス) id: c15a2aa7e8 (このIDを非表示/違反報告)
夢雪 - 悲しすぎるです!(´;ω;`)ウッ…すごく泣きました。無意識に気づいたら泣いてました。アルマトラン編私好きです。 (2018年3月25日 16時) (レス) id: a2e26e90a4 (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - ティナさん» だいぶ落ち着いてきました(*^^*) 声をかけてくださり感謝感謝です!! それに加え何回も見てくださってるとは…!! ゴールデンウィークあたりにはできると思うのでそれまで待っていてくださると嬉しいです(*^^*) (2017年4月28日 12時) (レス) id: 5483d583eb (このIDを非表示/違反報告)
ティナ(プロフ) - お久しぶりです! 落ち着いてきましたか? 何回も繰り返し見てます! 更新楽しみにしてます! (2017年4月27日 21時) (レス) id: c9a6aed029 (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - マロンクリームさん» コメントありがとうございます!! だんだん落ち着いてきたので更新もそろそろできると思います! これからもよろしくお願いします(*^^*) (2017年4月23日 0時) (レス) id: 5483d583eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千年彗星 | 作成日時:2016年6月25日 22時