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第185夜 王座 ページ38

こんなところで立ち話も何だからと、連れて来られたのは大きな洞窟。



「ここならそう簡単に見つかりません。少しのしのぎには最適でしょう? ふふっ」



皆で囲む中心には焚き火。
他にも果物や焼き魚が置いてあった。



「ねぇ。なんでここに君たちが」

「何でって。そりぁA様の隣で生きたいからですよ」



果物を手渡され、焼き魚を口に押し込まれる。
他の皆も、もぐもぐと食べ進める。

そんな光景を見ていると、自分が追放されたことを忘れてしまいそうで。

気づけば彼等の隣は、それくらい安心できる大好きな居場所になっていた。



「今なら、まだ間に合う。シバが寝てる今、帰った方がいい!!」



追放者なんて僕1人で充分だ。
君たちまで抜けてしまったらあそこはもう、
崩壊の一途を辿るだけだろう。



「バカ言わないでください」

「え?」



側にある木の枝を焚き火の中に投げ入れる彼。

パチパチと燃え出すそれを見つめながら、
ふっ…と嘲笑する君。



「何で俺たちがソロモン王やシバ王妃の命令にうんうん、と頷き動いてきたか分かりますか」

「何でって…言われても」



それは君たちがそうしたいからじゃなかったの? 可笑しいね、過ごした時間は長いのに聞かれると分かんないや…。



「A様がいたからですよ」

「ぼく、がいたから?」


それは思いもしなかった言葉だった。



「貴女がいたから生きようと思った」



僕はどこにでもいる普通の人間なのに…。


「貴女がいるから一緒に基地を守ろうと思った。平和であることを願った!! 」

「…」

「全て…、A様がいたからなんですよ」



『Aがいたからみんな頑張れたんだろうな〜、きっと』



そう言った彼の言葉が。
かつてレイメスが僕に向けて言ってくれた言葉と重なる。



「みんなソロモン王を崇める。でも俺にとっての王様はA様だけだ!!」

「俺、じゃなくて俺たちって言ってよ〜。私もA様が唯一無二の私の王様よ」




月の王様は太陽の王様に比べると、輝きは小さかった。


太陽の王は強い光を持っていたため、皆からは正式な王として見定められた。


しかし、月の王は誰にも見定められることなく太陽の王様の輝きを見守っている優しい王様だった。


けれども。その輝きは一度目にしたら忘れることのできないもの。




「じゃあA王って呼んでいいですかね」

「調子に乗るんじゃないの〜」



A王




それは初めて月の王様が王座についた瞬間であった。

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千年彗星(プロフ) - 夢雪さん» 読んでいただきありがとうございます! そして泣いてくださるなんて…! アルマトラン編を好きと言ってもらえて嬉しいです、ありがとうございます! (2018年3月25日 20時) (レス) id: c15a2aa7e8 (このIDを非表示/違反報告)
夢雪 - 悲しすぎるです!(´;ω;`)ウッ…すごく泣きました。無意識に気づいたら泣いてました。アルマトラン編私好きです。 (2018年3月25日 16時) (レス) id: a2e26e90a4 (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - ティナさん» だいぶ落ち着いてきました(*^^*) 声をかけてくださり感謝感謝です!! それに加え何回も見てくださってるとは…!! ゴールデンウィークあたりにはできると思うのでそれまで待っていてくださると嬉しいです(*^^*) (2017年4月28日 12時) (レス) id: 5483d583eb (このIDを非表示/違反報告)
ティナ(プロフ) - お久しぶりです! 落ち着いてきましたか? 何回も繰り返し見てます! 更新楽しみにしてます! (2017年4月27日 21時) (レス) id: c9a6aed029 (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - マロンクリームさん» コメントありがとうございます!! だんだん落ち着いてきたので更新もそろそろできると思います! これからもよろしくお願いします(*^^*) (2017年4月23日 0時) (レス) id: 5483d583eb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:千年彗星 | 作成日時:2016年6月25日 22時

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