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エピソード65 ページ22

兄の手が私の頭を今度はぽんぽんと軽く叩いてきた。

炎「いや、構わない」

見上げた兄は、無理して精いっぱいの笑顔を作ってる時の顔だった。

「……必ず、帰ってきます」

炎「あぁ」

「この鏡、持っていって、旅先でも笑顔の練習しますね!」

私はなるべく自然に笑って見せる。
私の腰を抱く炎兄の左腕はますます力が入る。

炎「あぁ。……必ず、無事に戻ってこい」

唇がくっつきそうなくらい、顔を近づけて言われた。
炎兄の静かな息使い、声と一緒に漏れる吐息まで聞こえてきそうでドキドキしてしまう。
相変わらずの不意打ち。
もう、条件反射のように俯いてしまう。
それでも。
……はい、はい、と小さな声で何度も呟いた
「あぁ」と、静かな声が降ってきた。

それからしばらくして、私は炎兄の腕から解放された。
やっと地に足がついたのに、なんだか心もとない気がした。
温もりが離れてしまったのが、なんだか残念でもあった。
でも。
炎兄はまだ仕事中なのだ。
それなのに、私のところに来てくれた。
ずっと、私のことを考えてくれていた。

(……もう、それだけで十分じゃない)

私はそう、自分に言い聞かせた。
お仕事で忙しい兄に合えないのは仕方がない、そう思っていたのに。
いざ、会ってしまうと離れがたい。
我ながら現金だと思う。

炎「……。明日は、見送りには行けない」

炎兄が、いつもより低い声で言うから、残念がってくれてるんだな、って感じた。
それだけで、頑張ろう! って気持ちになれる私は、我ながら単純だとも思う。

「うん。演習頑張ってね!」

――私も頑張るから! 左手で鏡を握り締め、右手でガッツポーズを作って見せる。
炎兄が、フッ、と頬を緩めてくれたのが嬉しい。

炎「期待しているぞ」

そういって、今晩、最初に私の気持ちを聞いた時と同じように私の頬を撫でて。
炎兄は部屋を出て行った。


――その晩、私は貰ったばかりの白銀の鏡を抱きしめて眠った。


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【御礼】5/01
7000hit有難うございます。
お気に入りや、感想、評価……全て励みです!
フェニクスの金属器と、炎兄からのプレゼント! エピソードを書きたいがためだけに、行った夜這い編。いかがでしたでしょうか。
(この章で、たぶん最後の紅炎ターンと思うと、つい長引きました(汗))

次回は出立。
以降、暫く紅覇様のターンになりますが、どうかお付き合いくださいませ。

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設定タグ:マギ , 練紅炎 , 煌帝国   
作品ジャンル:アニメ
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一花(プロフ) - 練 雛姫さん» いえいえ(^^) こちらこそ、有難うございます。これから、宜しくお願いしますね! (2014年7月27日 19時) (レス) id: aa8e4f9320 (このIDを非表示/違反報告)
練 雛姫(プロフ) - 一花さん» 出来ました!有り難う御座います!!これから宜しく御願いします(*^▽^)/ (2014年7月26日 22時) (携帯から) (レス) id: 6f946666e9 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 練 雛姫さん» いえいえ! 雛姫さんの、こみゅ〜のページで、「友達リスト」をクリックすると、申請者に、きっと一花がいるはずなので、許可をぽちっとしてやってください(^^) (2014年7月26日 21時) (レス) id: aa8e4f9320 (このIDを非表示/違反報告)
練 雛姫(プロフ) - 本当に申し訳無いのですが友達申請ってどうすれば受理できるのですか?(;_;) (2014年7月26日 12時) (携帯から) (レス) id: 6f946666e9 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 練 雛姫さん» そ、そこまで喜んでくださると、本望です。アカウントをお持ちだったようですし、友達申請出しますね。独り言だらけですが、宜しければ、受理してくださいませ! (2014年7月25日 15時) (レス) id: ab2859cca3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一花 | 作成日時:2014年4月6日 19時

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