エピソード58 ページ15
私の動揺に気づいているのかいないのか、炎兄いつもの無表情。
無遠慮に部屋に入り込み、ずけずけと私の傍までためらいなく近づいてきた。
服装はまだ昼間の仕事時のままである。白に赤のラインが入った裝束に、黒いマント。右肩に金属器の防具も付けたままである。
歩くたびに、腰に下げる剣の頭に常時つけられている、金属器……刀飾りがゆらゆらと煌めく。
(こんな時間にも正装をしているなんて……)
きっと、バルバッドのことで忙しいのだろう。
バルバッド攻略準備が本格的に始まってから、会議を除いて、私が炎兄と会えたのは数えるほど。
それも昼間の仕事中、たまたま廊下ですれ違う。……会えたと言っていいのかもわからない、束の間の時間だけだ。
交わす言葉も、軽い挨拶程度。
……まともに炎兄と会話したのは、バルバッドの攻略方針が決まった夜、書庫で話したのが最後であった。
しかし……。
そんな忙しいはずの兄が、何故私の部屋に突然やってくるのだろうか。
炎「北東郡に行くそうだな」
紅明に先ほど聞いた、と静かに言われた。
部屋の明かりは、寝台の横に設置された小さな収納棚の上のランプのみ。薄暗い部屋の中で、顔に影がかかった兄の声は心なしか不服そうに聞こえる。
「え、あ、はい」
炎「……」
「あの、北東郡の関所で問題が発生しているようで……それで、明日から――」
炎「紅覇と現地へ赴くと聞いた」
どうやら、長兄は私の事情全てを、次兄から聞いてきたようである。
炎「……俺に挨拶なしで発つつもりだったのか?」
「――え?」
予想外の言葉。
炎「しばらく城を空けるというのに、俺には会わずに行くつもりだったのか?」
なんだろう。
炎兄にしては、珍しく言葉に棘がある。
胸の前で腕を組んで私を見降ろす兄の顔を見るのがためらわれて、私は目を泳がせる。
「いえ、あの……炎兄は仕事で忙しいから、邪魔しちゃ悪いと思って……」
変に取り繕うより、本心を口にした方がいい気がして、正直な理由を言うことにした。
「直属の部下ならしばらく仕事を空ける挨拶をしに行くのも普通だと思うけど、私は明兄の補佐官であって、大総督である炎兄とは、仕事上では直接接点を持つこともほとんどないし……」
軍師の補佐をする人間の一人にすぎない私と、軍全体を動かす権限を持つ将軍たる炎兄。
どう考えても、職務上、立場が違いすぎて、私情で挨拶に行くのはおこがましい。
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一花(プロフ) - 練 雛姫さん» いえいえ(^^) こちらこそ、有難うございます。これから、宜しくお願いしますね! (2014年7月27日 19時) (レス) id: aa8e4f9320 (このIDを非表示/違反報告)
練 雛姫(プロフ) - 一花さん» 出来ました!有り難う御座います!!これから宜しく御願いします(*^▽^)/ (2014年7月26日 22時) (携帯から) (レス) id: 6f946666e9 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 練 雛姫さん» いえいえ! 雛姫さんの、こみゅ〜のページで、「友達リスト」をクリックすると、申請者に、きっと一花がいるはずなので、許可をぽちっとしてやってください(^^) (2014年7月26日 21時) (レス) id: aa8e4f9320 (このIDを非表示/違反報告)
練 雛姫(プロフ) - 本当に申し訳無いのですが友達申請ってどうすれば受理できるのですか?(;_;) (2014年7月26日 12時) (携帯から) (レス) id: 6f946666e9 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 練 雛姫さん» そ、そこまで喜んでくださると、本望です。アカウントをお持ちだったようですし、友達申請出しますね。独り言だらけですが、宜しければ、受理してくださいませ! (2014年7月25日 15時) (レス) id: ab2859cca3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一花 | 作成日時:2014年4月6日 19時