【マギ】炎にぃの秘蔵っ子。いちっ！【練 紅炎】

エピソード４２ ページ45

明「……まずは、この書類に目を通してください」

そういって、兄は先ほど私が拾い集めた書類の一部を返してきた。

「……？ はい」

一体何なのだろう、と思いながら、紙の束を受け取る。
枚数は１０頁ほど。
表紙には『北東郡の現状』とある。

……北東郡は、先代の王――私の実父、白徳皇帝が煌帝国の領土とした土地の名前だ。
バルバッド攻略のことばかり考えていた私にとって、その名前は久しく聞いた覚えのないものだった。

「……」

何故、今、「北東郡」の話が出てくるのか。
疑問に思いはしたが、紅明お兄ちゃんに読め、と言われた以上、私は黙って書類に目を通す。
そこには、昨年１年間で、北東郡の関所を通過した人数が示されていた。

(……１ヶ月くらい前から、あからさまに人数が減っている？)

報告書にも、一ヶ月と少し前……バルバッド攻略の策について、詰めていたころから、北東郡の関所を通過する人……とくに行商人の数が減ったと書いてある。
さらに、資料を読み進める。
恐らく私に見せる前に、明兄が書類を分かりやすくまとめてくれたのだろう。
３年前にまで遡って、毎月の関所の利用者数が図示されていた。

私の疑問は確信に変わった。
気のせいかと疑う余地などない。……はっきりいって、あからさますぎだ。

例年の同時期に比べて、北東郡の関所を通って行商に来る商人の数は明らかに減少している。――例年が１０ならば、今年に限っては１という具合にだ。
だが、３年前からのデータと見比べると、実際に関所の通行者数が減りだしたのは、もう少し前からのようだった。

(……去年の秋頃から、人数が減りだしている？)

それまでに比べ、わずかではあるが、行商人の通行数が減少しているようだった。


毎月じわじわとではあるが減っていく通行人数。……それでも、秋の段階では、それはほんのわずかな変化でしかなかった。よく調べなければ気付かれなかっただろうし、誤差の範囲で片付けられたかもしれない。

しかし。

決して誤差ではない。

誰かが意図して、あからさまに関所の通行を妨げているとしか思えない数字が、今年に入ってあがってきたのだ。
それが、ちょうどバルバッド攻略の詰めの準備が佳境に入っていたころと重なる。
庭では梅の蕾がほころぶ時期……早く春の訪れる地域であれば、年によっては雪解けが始まるであるう新年のことである。

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