恋してしまった、その瞬間…【赤司征十郎】

５seconds・雨の日の下校 ページ5

征十郎side



今日も慌ただしい一日が終わった。



梅雨の時期…
毎日、傘が手放せない。





体育館を出ると、目の先に女性用の傘が２つ。



そのうち、ラベンダー色の傘を差した子が振り返った。





『お疲れ様』

『あぁ、お疲れ様』





笑みを浮かべて話す彼女。





出会った当初と比べて、徐々に彼女の内面が見え始め…



ふと気付けば、視線は彼女を追っている。





品行方正や成績優秀など…



自分は異性にそんなものを求めてはいないんだ…と、自覚した。



何よりも優しさと前向きにさせてくれる笑顔が、俺には必要かもしれない。





果子「あっ、赤司君…良ければ、皆で帰らない？」

『構わないが…葉山「あーかーしーっ！」





彼女の隣にいた水山さんに誘われている時、間が良く小太郎まで側へ寄ってきた。





葉山「何の話してたんだよー。抜け駆け禁止っしょ！」

果子「あの…私が赤司君を下校に誘ったんです。すみません…」

葉山「そうなの？！」

『落ち着いて話を聞かなきゃ…コタの悪い癖だよ。下校くらい、別にいいじゃない』

『…』





【コタ】…



幼なじみという囲いで、年上の小太郎を特別に呼ぶ。



もし、俺が君の特別な存在になれたら、こんな風に呼んでくれるのだろうか？





葉山「オレも一緒に帰る！いいっしょ？」

『すぐそこの寮なのに？』

葉山「つべこべ言わない！Aもそうじゃん」



果子「赤司君は別宅から通ってるんだよね？」

『あぁ…』

果子「誰かが迎えに来たりしないんだ…」





使用人に送迎を頼むのは、中学時代にやめている。



せめて、学校ぐらいは自分の足で通いたい。





俺たち４人は、結局揃って下校することになった。



小太郎はここぞとばかりに、水山さんに一問一答。



水山さんは此方を気にしつつも、楽しそうに会話している。





『…赤司君』

『何だ？』

『雨って癒されるね』





急に何を言い出すのか…と、思った。



話題が思い浮かばなくて、咄嗟に出た言葉だったり。





『…可笑しなことを言うんだな』

『無意識にお疲れ気味なのかも…っ！？』

『！？』





次の瞬間、話の途中で何故か足を躓かせる彼女。



それを間一髪のところで助けた俺。





『転ぶ場所なんてあったかい？』

『ない…ね』

『帰ったら、ゆっくり休むように…』

『…ありがとう』





俺は羽目を外す彼女もツボにハマりつつある。



掴んだ腕の感触は、すぐには消えないだろう。

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