恋してしまった、その瞬間…【赤司征十郎】

１３seconds・儚く散る花火 ページ13

YOUside



俯いて足元を見る。



すると、鼻緒が切れていた。



まるで、今の私とコタの関係みたい。



こんな大衆の中で泣き顔は見せたくないけど、堪えられない位切なくなる。





コタは果子ちゃんの元に辿り着けたかな？





『日野さん？』

『！？』





何処からか私を呼ぶ声。
幻聴だったりして。





顔を上げてみると…





『…赤司君？』

『なかなか来なくて心配したよ。どうした？』

『あっ…』





まさかの赤司君が目の前にいる。



いきなりすぎて、反応が出来ない。





『…！鼻緒が切れたのか』

『相変わらずのドジだから、躓いちゃって…』

『立てる？』

『うん』

『さぁ、手を掴んで』





差し伸べてくれた彼の手に重ねる自分の手。
温かくて柔らかい。





『ありがとう』

『ホテルへ戻ろう』

『えっ…これから、花火なのに…私１人で帰れるし、赤司君は皆と見てきて？』

『…いいんだ。花火はまた見られる』

『でも…』

『ホテルから見る花火もいいかもしれないだろ？』





こういう時、赤司君には勝てない気がする。



おんぶに抱っこだな…





『そうと決まれば行こう』

『『行こう』って…キャッ！？』





何の身構えも無しに気を抜いていると、彼が私の身体を持ち上げた。



これって、お姫様抱っこ！？



周りからの視線が、やけに恥ずかしい。





『あ、赤司君！？自分で歩くよ！』

『日野さんは何も気にしなくていい。この方が早く戻れる』

『…』





普段の雰囲気とは違って、優しさが滲み出ている彼。



勿論、私は凄く動揺していた。





そして、ホテルに到着…





『ごめんね。疲れたでしょ？』

『どうってことない。気にしすぎだ』





ロビーのソファに腰掛けて、外を気にする。





コタは、今頃…



果子ちゃんを呼び出して、告白してるのかな？





辛い、悲しい、切ない、泣きたい。



そんな思いに打ちひしがれている時だった。





空高く、花火が舞い上がる。



儚く散りゆく様は、私の恋のよう。





『始まったね』

『あぁ…』

『皆も見てるかな？』

『多分な』

『赤司君…？』

『何だい？』

『赤司君が躓いた私を見つけた時…』

『…？』

『や、やっぱり何でもない！』





私に声を掛ける前、もしかしたら表情を見てなかった？…と、聞こうとしたけど思い留まった。



何も言わないで側にいてくれるのは、彼の優しさだと思いたい。





赤司君、ごめんね。

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