我を待つ者 ページ10
着いた場所は、もう誰も参拝に来ない廃れた神社跡だった。
その神社の境内に座る一匹の妖怪。
おそらく、あれが――
?「ふん。今日はえらく大人数だな」
私達に気がついた妖怪はそう言った。
リ「連れて来たよ。君の言ってた人を」
リクオ君がそう言うと同時に、夏目君が一歩前に出る。
妖「……レイコ」
夏目君を見て、妖怪はそう呟く。
それは、とても悲しい響きだった。
会いたくなくて会いたくなくて、でも本当は会いたかった人物。
しかしその人物は――
夏「レイコは祖母の名だ」
妖「…………」妖怪は一息つき、「そうか、レイコは死んだのか」
どうやら、夏目君の様子を見て悟ったらしい。
妖「これだから好かんのだ。人の子は」
それは妖怪の本心だったのかもしれない。
先に逝ってしまった、たったひとりの人の子。
二度と戻ってこない、たったひとりの友人。
夏「……名を返しに来た」
夏目君は鞄から、何枚もの紙を束ねた縦長い物を取り出し、それを開く。
――我を護りし者よ。その名を示せ。
頭の中で、夏目君の声が響いた。
髪は風に吹かれるでもなく、自動的に動き、そして一枚の紙が真っ直ぐと立った。夏目君はその紙を千切り口に咥え、手を強く打ち合し、息を吹いた。
私の偏見かもしれないが。
妖怪に名前を返す時に手を合わせるのは、感謝をしているように見えた。
祖母を心配してくれてありがとう。
ずっと放ったらかしでごめんなさい。
遠く離れたこの場所で、祖母を思ってくれてありがとう。
一度も名を呼ばず、待たせっきりでごめんなさい。
祖母の友人になってくれて――ありがとう。
紙から文字が飛び出し、その文字は妖怪の額に入っていく。おそらく、あれが妖怪の名前なのだろう。
頭の中に、ひとつの映像が流れる。
目の前にいる妖怪と、半袖のセーラー服を着た、長い茶髪の女性、おそらくあれが夏目レイコさんだろう。
ラッキーアイテム
革ベルト
ラッキーカラー
あずきいろ
116人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紗嵐(プロフ) - 126位にランクインしました! 皆様のお陰です! ありがとうございます! (2014年3月13日 16時) (レス) id: f9f03150e8 (このIDを非表示/違反報告)
紗嵐(プロフ) - こばんさん» ありがとー! 嬉しいなっ☆ これからもがんばるねっ♪ (2012年8月31日 23時) (レス) id: 4a0538ac6c (このIDを非表示/違反報告)
紗嵐(プロフ) - 和美さん» 私も夏目ラブです! ありがとうございます!ありがとうございます! (2012年8月31日 23時) (レス) id: 4a0538ac6c (このIDを非表示/違反報告)
紗嵐(プロフ) - 皐月飛亜さん» ありがとうございます! とても嬉しいです! 頑張りますねっ! (2012年8月31日 23時) (レス) id: 4a0538ac6c (このIDを非表示/違反報告)
紗嵐(プロフ) - 狛夜さん» ありがとうございます! 頑張ります! (2012年8月31日 23時) (レス) id: 4a0538ac6c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:紗嵐 | 作成日時:2011年11月12日 17時