妖怪の主の幼馴染で妖怪が見える彼の友達

お別れ ページ26

レ「ツユカミ、いつまでも供物(こんなこと)は続かないわよ。人はとても現金で薄情よ。力があるうちにもっといい住処を探すのが身のためね」

ツ「ありがとう、レイコ。けれど一度愛されてしまえば、愛してしまえば、もう忘れることなどできないんだ」

彼はもう、この場を離れることができなくなってしまっていた。

一人の女性のために。

ツ「ありがとう夏目、翅川、斑。心愛しい私の友人――」

そして風が吹き、ツユカミさまは消えた。

ニ「……馬鹿め」

ツ「ふふ、斑、お前にもいつかわかるよ」

ニャンコ先生の小さな呟きに、姿が見えなくなったツユカミさまは答えた。

それが、彼の最後の言葉だった。

人間を――たった一人の女性を愛した心優しき妖怪は、消えた。

帰り際に降った雪は明け方まで降り積もった。

森にも。

山にも。

街にも。

ツユカミさまはハナさんに逢えただろうか。

その日の雪は寒くなかった。

誰もいなくなった祠を思うと少し寂しいけれど。

貴「え、夏目くん、熱出たの？ わかった、お線香は私があげに行くから、夏目くんは安静にしてて」

ニャンコ先生も夏目くんも相変わらずで。

騒がしい日々が続く。

愛しいものと。

貴「妖怪のことはあまり好きってわけじゃないけど、わかりあいたいと思う心は同じかもしれないね、ツユカミさま」

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