祠へ ページ25
次の日、私はあれから気になってツユカミさまの元に向かった。
?「あれ、A?」
誰かに呼ばれ、声のした方を見れば、そこには夏目くんがいた。
貴「あれ、夏目くん。何してるの?」
夏「それはこっちの台詞」
貴「私はこれからツユカミさまのところに行こうかと」
夏「そうか。俺も行くんだ。一緒に行こう」
貴「うん」
名を返し終わったら毎回のごとく倒れる夏目君だが、一日休んで体調は戻ったらしい。安心した。ニャンコ先生の話によると、昨日の「スズキ」という妖怪は木陰を伝って村へ下り、村人に残飯(たべもの)をもらうかわりにその家の皿を洗って帰ると言われている妖怪だそうだ。話を聞く限り、とても優しい妖怪だと思った。
食べ物を貰うと、感謝として何かを返す。
そんなことをする妖怪は、果たしてどの時代でも簡単にいないだろう。
しかしこの時代、妖怪を見る人間も減って、木陰ももう町へは届かない。
時代の進歩、人間の変化に、妖怪は決してついていけないのだ。
夏「ツユカミさまー、蜜柑の差し入れ持って来てやったぞー」
ツユカミさまのいる祠に着いたが、そこには誰もいなかった。
ツ「二人とも」
しかし声はした。祠の石畳の上を見れば、そこには昨日見た姿より遥かに小さくなったツユカミさまがいた。
夏「……あれ? ツユカミさま、更に小さくなってないか?」
貴「大丈夫なの? これ」
ツ「む?」
と。
ツユカミさまの身体が光り出した。
夏「!? どうしたんだツユカミさま、何か光り出したぞ!?」
ツ「おおお? ……そうか。ハナさんが逝ってしまうのか」
どこか悟ったように、悲しそうにツユカミさまはそう言った。
夏「――え?」
ツ「ハナさんは長いこと患っていてね。最近はここへ来るのもやっとだったんだ。ハナさんは私を信仰してくれた最後の一人、彼女が逝けば私も消えるのさ」
夏「……俺が信仰する。毎日は無理でも拝みに来てやる」
貴「私も」
ツ「駄目だよ、二人とも。きみ達は私の友人だ。これでいいんだ。ハナさんと共にいける」
そしてツユカミさまは思い出す。
その昔、自分の名前を取り上げた女との会話を。
自分のために言ってくれたその言葉を。
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紗嵐(プロフ) - 126位にランクインしました! 皆様のお陰です! ありがとうございます! (2014年3月13日 16時) (レス) id: f9f03150e8 (このIDを非表示/違反報告)
紗嵐(プロフ) - こばんさん» ありがとー! 嬉しいなっ☆ これからもがんばるねっ♪ (2012年8月31日 23時) (レス) id: 4a0538ac6c (このIDを非表示/違反報告)
紗嵐(プロフ) - 和美さん» 私も夏目ラブです! ありがとうございます!ありがとうございます! (2012年8月31日 23時) (レス) id: 4a0538ac6c (このIDを非表示/違反報告)
紗嵐(プロフ) - 皐月飛亜さん» ありがとうございます! とても嬉しいです! 頑張りますねっ! (2012年8月31日 23時) (レス) id: 4a0538ac6c (このIDを非表示/違反報告)
紗嵐(プロフ) - 狛夜さん» ありがとうございます! 頑張ります! (2012年8月31日 23時) (レス) id: 4a0538ac6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紗嵐 | 作成日時:2011年11月12日 17時