気がする ページ22
ハ「あら、お若いのにあなた達もお参りに?」
夏「ええ、まあ……」
ツユカミ様の祠に来た私と夏目くんを出迎え(?)てくれたのは、ハナさんのそんな質問だった。しかし夏目くんは答えにくそうだった。まあ、それはそうなのだが……。
ハ「よかったわ。最近は私だけみたいで、露神様お寂しいんじゃないかと思っていたんですよ」
貴「いつからお参りに?」
ハ「小さい頃からからね。……笑わないでくださいね、私一度だけ『露神様』をお見かけしたことがある気がするんです」
貴「えっ!?」
私も夏目くんもそれには驚いた。
今もなおあの神様が見えていない彼女は、それでも見たことがある気がすると言った。子供の頃に見たことがあるのはよくある話ではある。それが大人になって見えなくなっていくのも――よくある話である。でも、彼女の言い方は、まるで、はっきりと見たわけではないというものだった。
気がするだけで。
見たわけではない。
ハ「女学校からの帰り道、その日はとてもいいお天気で、いつものようにお参りして目をあげようとしたら、祠の後ろに足が見えたんです。驚いたけれど、気付かないふりをしたわ。その翁の面を被った人は気持ち良さそうに、『今日は暖かいなぁ』って、呟いていたの。私、思わず『そうですね』って言ってしまいそうになったけれど、きっと人間(わたし)に姿を見られてしまったと気付けば露神様はびっくりして消えてしまう気がして……」
どの妖だって、人間が彼らを認識できているとは思いもしていない。
私や夏目くん、時々見える田沼くんのような存在だってそんなにはいない。
見えないのが当たり前で、見えていなくともいつもそこにいる。
だから彼らは人間に悪戯をするし――人間を喰らうのだ。
決して妖の全部が悪いと言いたいわけではないのだが、それでも、そんな妖は少なくはない。むしろ、人間のことを好意に思っている妖の方が――少ないのだ。
人間を毛嫌いする妖は、山ほどいる。
ハ「ふふ、でも今思うとあれは旅芸人か何かだったのかしら。けれど時々思うの。思い切って声を掛けてみればよかったかしらって。『そうですね』と、たった一言でも」
それが――彼女が最後に口にした後悔だった。
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紗嵐(プロフ) - 126位にランクインしました! 皆様のお陰です! ありがとうございます! (2014年3月13日 16時) (レス) id: f9f03150e8 (このIDを非表示/違反報告)
紗嵐(プロフ) - こばんさん» ありがとー! 嬉しいなっ☆ これからもがんばるねっ♪ (2012年8月31日 23時) (レス) id: 4a0538ac6c (このIDを非表示/違反報告)
紗嵐(プロフ) - 和美さん» 私も夏目ラブです! ありがとうございます!ありがとうございます! (2012年8月31日 23時) (レス) id: 4a0538ac6c (このIDを非表示/違反報告)
紗嵐(プロフ) - 皐月飛亜さん» ありがとうございます! とても嬉しいです! 頑張りますねっ! (2012年8月31日 23時) (レス) id: 4a0538ac6c (このIDを非表示/違反報告)
紗嵐(プロフ) - 狛夜さん» ありがとうございます! 頑張ります! (2012年8月31日 23時) (レス) id: 4a0538ac6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紗嵐 | 作成日時:2011年11月12日 17時