羨ましい ページ21
友「……A、Aってば」
暗い闇の中、遠いところからクラスメイトが私を呼んでいる。そしてその声はどんどん近付いてくる。
友「いい加減に起きなさい！」
貴「！」
起きた。
どうやら私は寝ていたようだ。
貴「今、何時……」
友「何寝ぼけたこと言ってんの？ 放課後よ」
貴「……マジで？」
友「マジで」
教室を見渡せば、確かにクラスメイトの人数が減っていた。
というか、ほとんどいなかった。
貴「あっちゃあ……」
友「A、最近寝てるね。よく寝れないの？ ……やっぱり、一人暮らしって大変じゃない？」
貴「ううん、そんなことないよ」
言えない。
そんな心配そうな顔をしてくれる友人に。
とある妖を探しているなんて。
そんな本当なのに誰にも信じてもらえないようなこと。
ときどき思う。
どうして私には見えて、みんなには見えないのだろう――
と。
そんな考えは、夏目くんのことを知った今でも、考える。
知った今だからこそ、余計に考える。
他のクラスの田沼くんは、妖をぼんやりとしか認識できていないし、その正体を、彼は知らない。
だからときどき思う。
『何故見えないのか』。
『何故知らないのか』。
でも、それが彼ら彼女らの普通であって、日常である。
すぐ隣りに妖が歩いていたとしても。
目の前に妖がいようとも。
それに全く気付かない。
それに全く気をつけない。
それが少しだけ、羨ましくなる。
夏目くんと一緒にいるニャンコ先生は依代である招き猫があるから、人に姿が見える。それに強力な妖怪だと、自分の意思で姿を見せることもできるし、強力ゆえに天候や相手の気分で見えてしまうときもあるらしい。
それでも、そんな妖怪は滅多にいないだろう。
だから――見ない人の方が多い。
こんなにも――世界は妖で溢れているというのに。
その姿を、認識できない。
祠の前で拝んでいるハナさんの前に、ツユカミ様がいることすら彼女は気付かない。
気づ――かれない。
こんなにも近くにいるのに。
少し手を伸ばせば届いてしまう距離なのに。
そんな光景を見てしまうと、やはり思ってしまう。
どうして見えないのだろうか――
羨ましく思う反面、悲しくなる。
私は、見ていることしかできないのだから。
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紗嵐(プロフ) - 126位にランクインしました！ 皆様のお陰です！ ありがとうございます！ (2014年3月13日 16時) (
レス) id: f9f03150e8 (このIDを非表示/違反報告)
紗嵐(プロフ) - こばんさん» ありがとー！ 嬉しいなっ☆ これからもがんばるねっ♪ (2012年8月31日 23時) (レス) id: 4a0538ac6c (このIDを非表示/違反報告)
紗嵐(プロフ) - 和美さん» 私も夏目ラブです！ ありがとうございます！ありがとうございます！ (2012年8月31日 23時) (レス) id: 4a0538ac6c (このIDを非表示/違反報告)
紗嵐(プロフ) - 皐月飛亜さん» ありがとうございます！ とても嬉しいです！ 頑張りますねっ！ (2012年8月31日 23時) (レス) id: 4a0538ac6c (このIDを非表示/違反報告)
紗嵐(プロフ) - 狛夜さん» ありがとうございます！ 頑張ります！ (2012年8月31日 23時) (レス) id: 4a0538ac6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紗嵐 | 作成日時：2011年11月12日 17時
