破壊 ページ9
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ドッゴゴォォンン……
けたたましい地鳴りと共に会場全体を土埃が包む。
「ゲホッゲホッ……」
有り余った魔力の放出は慣れないもので、手のひらから流れ出る膨大な魔力を制御できなかった。
土埃が消え始めると、目の前に大きな穴が現れた。
「あらー……うっかり」
『MPFが、破壊……!?カンストしています!』
「な、会場の床が……」
どよめく会場。
ドーピングによって異常な威力に増した奥義は、MPFどころか地面さえも簡単に破壊した。
場内の中央には不鮮明に9999の数字だけが寂しく浮かんでいた。
『競技パート1・2フィニッシュ!!な、なんなんだこのギルドは……!!誰も止められないのかぁー!!?』
アナウンサーの煽りによって会場のボルテージは一気に最高潮に達する。
周りの熱気とは裏腹に、私は白けた顔で破壊された地面をジッと見つめていた。
「請求ならマスターによろしくね」
逃げるように会場から立ち去ろうとすると、誰かが私を引き止めた。
「お見事。一度手合わせ願いたいものだ」
私の名を呼び引き止めたのはラミアのジュラだった。
参加者がポカンと間抜け面で放心してる中、唯一彼一人だけ私の後を追ってきていた。
「絶対……嫌ですよ。貴方、強いじゃないですか」
「強者と本気でぶつかるのは嫌いかね?」
「えぇ。私、弱い者を甚振るのが趣味なんです」
彼は目尻に皺を寄せ、困ったように笑う。
そんな彼に軽く会釈し私は応援席へと向かった。
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作者名:梅水晶 | 作成日時:2022年12月31日 16時