羨望 ページ42
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「そうね……今ここで戦って勝った方とデートしてあげる。ここは暑いし、ホテルでも行く…?」
生理的に潤んだ瞳で2人を見上げ、二人の手を酒で火照った私の体に触れさせる。
二人とも頬を赤らめお互いの顔を見合せた。
たまにはこういう初々しい人達で遊ぶのも悪くないかも、なんて――……
「それならもう勝負はついてる。俺の単独勝利だ」
私の背後から伸びてきた大きな手が私の体から二人の手を引き離した。
「ラクサスくん。君もこの戦いに参加するなら君ともう一度拳を交えることになりそうだ」
「その必要はねェよ、オッサン」
「ん、」
反抗しようと開いた私の口を、発言権を奪うかのように熱く柔い唇が塞いだ。
濃くて苦い……ラクサスが好きなお酒の味がする。
しばらくして私の唇を甘噛みし、離れる。
「こいつは元から俺のモンだ」
「ま、さか…お前ら付き合ってんのか?」
分かりやすく動揺で引き攣る二人の口角。
「そういう事だ」
ぶっきらぼうにそう言い捨てたラクサスに、グッと腰を抱かれ方向転換を余儀なくされる。
「……ごめんなさいね二人共。また今度」
首だけ振り向き、ポカンと口を開けて突っ立っている二人に軽くキスを投げた。
「ねぇラクサス」
何度名前を呼んでも返事どころか反応すらも返してくれない。
目的地も分からないまま彼の腕に抱かれて歩き続ける。
パーティ会場の出口に向かう途中、先程ラクサスの二の腕を絡むように抱きしめていた女と再び目が合った。
特に何かを言う訳でも笑いかけるわけでも無く、ただ流れるように彼女が視界から消えるまで横目で見ていた。
最後に見えた茹でダコのように真っ赤に染まった嫉妬に狂う彼女の顔をしばらく忘れる事はなさそう。
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作者名:梅水晶 | 作成日時:2022年12月31日 16時