炎の竜 ページ35
広場での集会の後、各々のギルドに持ち場が与えられた。
いつもなら夜も賑わう街の中心部は人影一つもなくあっけからんとしていた。
遠くの王宮の様子が分からない中、いつ来るか分からない恐怖に誰もが身を強ばらせていた。
不気味に光る月を眺めていると、突然胸騒ぎがした。
「…来る」
野生の勘がここに飛んでくる得体の知れない何かを察知した。
そのたった数秒後、巨大な火だるまが轟音をたてながら目の前に舞い降りる。
「かかれー!!!」
マスターの合図で誰もが身構えた瞬間。
「我が名はアトラスフレイム。貴様等に地獄の炎を見せてやろう」
その言葉に反応する間もなく、耳を塞ぎたくなる轟音と身を焦がすような炎が辺り一帯を覆った。
ドゴォオオオオ!!!
自分の足で立っていられないほどに荒れ狂った業風はいとも簡単に足場を崩し、体を吹き飛ばす。
浮いた体が強く地面に打ちつけられる前に、近くにいたラクサスが咄嗟に私の身を覆い包んだ。
「ありがと。あとで何か1つ言う事聞いてあげる」
「その言葉、忘れるなよ」
鼻で笑う彼の手を握って立たせる。
「おい!!そこ!!こんな時にイチャつくな!!」
「態勢を立て直せ!!」
今の一撃で致命傷を負った仲間はいないよう。
一人、また一人と立ち上がる。
だがあの聖十大魔導の称号を得たマスターの一撃さえ、いとも簡単に跳ね返す。
魔導士がどれほど束になって攻撃しても意味がない。
致命傷を負わせるどころか、傷一つも付けられない。
アクノロギアが異常だったとしても、ドラゴンの脅威は何一つとして変わらない。
そんな絶望的な状況の中、誰かの張り上げた声が暗闇の空に響き渡る。
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作者名:梅水晶 | 作成日時:2022年12月31日 16時