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「わんこや、Aの嬢ちゃんは我輩が認めた正式な軽音部部員じゃ。
それに、わんこも『戯れる相手』が出来て嬉しいじゃろう？
『わんことにゃんこ同士』、仲良く遊ぶんじゃぞ」
思わず耳を疑った。
朔間先輩は何事も無いようにうんうん。と頷いているが、二点程聞捨てならない言葉を言っていたような気がする。
否、晃牙が更に噛み付き始めた姿を見ると気のせいでは無い。
こう清々しく言われると『この人は私達を部員では無く、愛玩動物として見ているのでは？』と思ってしまう。
「失礼します。
A居ますか？」
この騒がしい部室内へコンコンと丁寧にノックをして入って来たのは同じプロデュース科のあんずだ。
彼女はギャンギャン喚く晃牙に一瞬、小動物のようにビクッとしたが、直ぐに私の元へ小走りで駆け寄った。
「Aって清掃の校内アルバイトしてたよね？
急遽臨時の清掃が入ったみたいで、Aは今から参加出来る？」
「えっ、そうなの？」
校内アルバイトと云うのは夢ノ咲学院専用の校内通貨を稼ぐ為の制度。
校内通貨があれば、食堂の利用から備品の調達、衣装製作の依頼、罰金の支払い、練習室のレンタル、レートは低いが現金にも変える事が出来る等、大変便利な物だが、通貨を稼ぐ方法はドリフェスもしくは校内アルバイトが主だ。
勿論、アイドルでは無い私は校内アルバイトのみで通貨を稼いでいる。
正直、生活品の殆どが学院内の購買部で購入出来る為、一人暮らしをしている私には有り難い。
「うーん……出来れば参加したいけど…」
さっきまで縫いぐるみを作っていた身としては言い難いが、一応今日は軽音部の活動日で部長で在る朔間先輩も起きてしまった。
何より此処で参加すると即答すれば、後ろで何やらスタンバイしている晃牙にまた噛み付かれる恐れがある。
チラリと何気なく朔間先輩へ視線を送ると目が合い、穏やかに微笑まれた。
「我輩は構わんぞ、嬢ちゃん。
嬢ちゃんの生活が掛かっておるのなら、仕方あるまい。
活動と言っても大した事はしておらんからのう」
それを部長の貴方が言っちゃうのか。
「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて……
すみません、次の活動日には必ず顔出しますからっ！」
部室を後にした私は『次の人にも声掛けてくるから』と駆けて行ったあんずに教えられた集合場所へ向かう事にした。
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作者名：ナナシ | 作成日時：2018年4月7日 12時
