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「君、そこそこ可愛いね?
俺達と遊ばない?
弟君も一緒でいいからさー、ね?」


こんな台詞を羽風先輩以外の人間から聞いたのは初めてだ。
否、羽風先輩は顔や雰囲気が上品な分、より一層彼等の誘い文句が下品に感じてしまう。
同じナンパでも人間次第でこうも違うのかと沁々思った。


「他にも連れが居るので無理ですね」

「えー?そうなの?
じゃあ、IDだけでもいいから教えてよ?
もしかして、まだガラケー?」

「今日はスマホを家に置き忘れたんで」


だから、さっさっと去れ。の意を込めて、事務的且つ簡潔にお断りを入れたのだが、どうやら三人共理解してくれる頭は無かったらしい。
『え〜?冷たくな〜い?』と笑うだけで、一向に立ち去ろうとしない。

いっそ、鬼龍先輩辺りを召喚してやろうか。

そんな事を考えていると私の袖を掴んでいた良太君が立ち上がり『お姉ちゃんイヤがってるだろ!』と震えた声ながらも叫び、三人組を睨み付けた。
しかし、良太君の勇気を嘲笑うように三人は下品な笑い声を上げ、一人が良太君の頭を乱暴に撫で回す。


「なに〜?シスコン君〜?
お姉ちゃん離れしなきゃ駄目じゃ〜ん!」

「止めろ!さわんなっ!
お前らのやってる事、ダセェんだよ!
人のイヤがる事したらダメだって学校で習わなかったのかよ!」


良太君の言葉は凄く正論だ。
けど、こう言うタイプの人間達にそれが通用するなら揉め事も警備員も……いつから其処に居たのかは解らないが、彼等の後ろで腕を組んで、にこやかに佇んでいる夜闇の魔王も要らないだろう。


「はぁ〜?何このチビ?うっぜ」

「そうじゃのう。
身の程を弁えぬ小物は面倒じゃ」


背後から聞こえた声に三人組は一斉に後ろへ振り返る。
自分達よりも背が高く、背筋が凍る程の美しさと足元にも及ばぬ威圧感を放つ彼の姿を目にして、彼等は一体この数秒の沈黙の中で朔間先輩をどう捉えたのか。
花が枯れるようにシュン…と何処か縮こまって行くのが後ろ姿だけで伝わる。
そんな彼等を余所に朔間先輩は優々と此方に歩み寄り、『実に勇敢じゃったぞ、良太』と言いながら良太君の頭を一撫でした。
良太君は一瞬、朔間先輩に撫でられた事に目を丸くしたが、照れ臭ささを隠すように『男として、お姉ちゃんを守るのはトーゼンだからな!』と何処となく晃牙を思わせる強めの口調で朔間先輩へ言葉を返す。

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作者名:ナナシ | 作成日時:2018年4月7日 12時

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