【戦国BASARA】恋愛短編集

長曾我部元親/バイク屋の君 ページ10

――――いい女だ。
初めてあんたを見て思ったことだ。

街中で、一台のバイクが目に留まった。
それが止まっていたのは、こんなとこあったのかなんて今更ながらびっくりするような、薄汚れた小さな店だった。
店名も文字色が日に焼けてよくわからないその店に、不似合いなほどピカピカと日差しを返すバイク。
改造されているわけでもなく、自分好みのゴツい車種でもないが、なぜだか目を引かれた。
年季が入っているが、ホイールも、一昔前にはやったようなダサいペイントもまるで新品のようだ。
そんな中古のオートマが飾られている店の引き戸を、元親はそっと開けた。

ガソリンの匂いが鼻を突く。
ラジオが流れる店内。
今まさに磨かれている青い車体ががたりと揺れ、その向こう側から、後頭部をさすりながらひょこりと顔を出したのは、まだ若い女だった。
「お、珍しいね。お客さんかい？」
結局、バイクを買う気も、金もなかった俺は小一時間、好きな車種など、まぁマニアックな話をして帰った。
おぉっと忘れちゃならねぇ、もう一つ。
あれよあれよという間に、その女に惚れちまったのである。

なんて話を、慶次にはなすと、そりゃあもう告白しかないじゃないの、なんて簡単に言うもんだから、俺はカフェオレを噴き出した。
そんな、出会って二日で告るって。
「まあまあ、上手くいくって。」
なんて無責任に言う慶次に触発され、おうよ、と言ってしまった三秒前の自分を殴りてぇ。
チャイムが鳴りクラスの違う慶次と別れ、教室にゆっくりと考え事をしながら戻ると、次は移動教室だったらしく、誰もいない。
急いで道具をまとめ、階段を駆け上がるも、鳴るチャイムの非情さ。
足は自然とお目当ての階を通り過ぎ、その時間は屋上でサボった。
あの女のことを考えながら。

ＨＲが終わり、あのバイク屋へと向かう。
告白なんか、と心臓は煩い。
もうちょっと励ましてくれたってよかったじゃねえかと、用事があると急いで帰ってしまった慶次を恨む。

がらり。
あの女と目が合った瞬間、俺は口を開いた。
「いい女だ。初めてあんたを見て思ったことだ。」
女の目が見開かれる。
対する俺も次ぐ言葉がみつからず。
おもいついたのは、去り際に慶次が教えてくれた、甘い告白台詞。
言う気はなかったが…。
「、ぜってぇ幸せにするからよ。」
まだ高校生の俺が言うには、無責任すぎたか。
でも、
「じゃあ、この店ももっとでっかくしてくれよ？」
「おうよ」
また無責任で確証の持てない返事をしちまうのは、

まあ、しゃあねえな。

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