【戦国BASARA】恋愛短編集

柴田勝家/第二ボタン（ちょこみんと♪様リクエスト） ページ19

すぐ近く、手を伸ばせば簡単に手が届きそうな距離だった。

卒業証書をベッドに放る。
私は本当に卒業し、―――彼女との繋がりはなくなってしまったのか。

お市様に焦がれていたころ、私は―――。
あの時、私は何もしなかった。
しかし、恵まれていたのだろう。
浅井氏がいる限り、私にはどんな打開策もなかった。
……それが、相応であったのだ。
浅井氏さえいなければと、いかようにも逃げることが出来たのだ。

それがどうだ。
三年間、私には猶予があった。
恋しい人を、私の未来(さき)を、私は自身で変えることが出来た。

一つ、また一つと、学ランのボタンを外す。
下から外すのが癖だった。
第二ボタンに差し掛かる。
そこで、指が止まった。
無意識下で、彼女のことを考える。
そういえば、そう。
彼女と、初めて喋ったのは。
あれは学祭の時だった。伊達氏が「野球部の方に力を入れたい」と、クラスの指示を任されたとき。
しどろもどろだった私に、手を差し伸べてくれたのは、同じく委員の彼女だった。
只の仕事の効率向上のためだとは理解していたが、あの瞬間から私は彼女を目で追うようになったのだ。
儚げで、愁いを含んだお市様よりも、彼女の―――Aの笑顔を、求めるようになってしまったのだ。
よくもこう簡単に、と思った。

しかし、恋に落ちたのはそうでも、この思いを手放すことなど、簡単にはできはしないのだ。

一つ、また一つと、学ランのボタンを閉める。
三年間、無駄にした時間を埋めるように。
恋しい人を、私の未来(さき)を、私自身で変えるのだ。

伊達と表札のある豪邸の呼び鈴を鳴らす。
「勝家か！？来ねぇなんて言ってたじゃねぇかよ。早く入れ。場所は…うるせえからすぐ分かる。――――謝恩会と、Aの失恋慰めの会真っ最中だからな。」

静かに、扉を開いた。
なるほど、五月蠅い。
とくに左近の声が大きく響く部屋へと向かう。

騒ぐ男子。集う女子。
私は、迷わず女子の方へと足を運んだ。
大勢の女子の真ん中で、突っ伏して肩を震わすAに近づく。
男子も女子も、会話をやめる。空間が静寂に包まれる。
それに気づき顔を上げたA、その泣き腫らした目と合うか否や、私は彼女へ口づけた。
「私じゃ、ダメだろうか。」
「……それ、普通する前に言うから。
　
　ダメなわけないじゃん。
　…遅いよ。」
ばか、そう呟いて、私の第二ボタンに指をひっかける。
ブチリ、そんな音とともによろけた私。
唇が、また触れ合った。




歓声と、伊達氏の口笛と、左近のばか騒ぎが、私達を祝福する。

長曾我部元親／眠り姫（黒丸様リク）→←島左近/将来有望出世株（斑鳩様リクエスト）

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