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島左近/イカサマもこれまでに ページ16

※ちょい不倫注意。

散り際の桜の下。広い晴天から太陽が温かく見守る中で、まだ幼かった私たちは、契りを交わした。
誰も知らない、ただの口約束。
でも、子供心の気まぐれというには二人の心には重すぎて。
そしていまも、私は囚われたまま。

「A!」
そう名前を呼ばれたのは、輿入れをした翌日だった。
瞬間、私は己の目を疑った。
もう、何年も前、……どうやって別れたのかも思い出せない、初恋の人がいたのだ。
彼のことは久しく忘れていた。
いや、心の奥底に仕舞い込んだという方が正しいか。でなければ、今もこの…古傷が疼くかのような息苦しさを感じるはずはない。
「清興……。」
「あ、いや、その名前捨てたはずなんっスけどね。
 今は……左近ってんだ。」
そうやって鼻を掻く彼は、昔と変わらず……いや、昔よりは少しばかり、無理矢理な明るさが在り、その中に、密かな覚悟と、少しばかりの仄暗さが見えた。
「左近……。」
「そ。左腕に近し、ってね!」
左腕、その言葉を聞いて私は顔を伏せた。
そして、彼の腕が私を包み込んだのもその同時だった。
私は石田家の者。彼の主の正室。
多分、彼は知らないんだろう。
それを私は、肩をすくめたままで、ただ甘んじている。
「俺は、ずっと……。アンタのこと、」
好きだった。
その言葉を振り切るように、私は彼の肩を押した。
思いのほか緩かった力は、直ぐに解ける。
御戯れを、小さくつぶやき、走り去る。
その時感じた寂しさは、彼の迷いが生み出したものかもしれない。

結局、好きだったと言う彼の低声が耳を離れなくて、次の日も、次の日も、、また次の日だって、戦のない日は毎日、同じ時間、同じ場所で、私たちは許されざる逢瀬を繰り返した。


「左近は、すべて知っておるわ」
耳元で聞こえた声は、聞いたことがないものだった。
足音すらしなかったので、いささかびっくりしたけれど、振り向いて見えたその姿で、私はよく旦那様の話に出てくる大谷様だと分かった。
「ぬしは、いつまで甘んじておる?
 それは、―――裏切りよ、イカサマよ」

*====*
「もう会うの、止そう」
Aは、俺の腕の中で、くぐもった声を発した。
いつかは、と覚悟していたはずのその言葉。
するりと、Aは俺の腕の中から逃れた。
「素寒貧になっちゃうよ」
ぶわり。
彼女の背景を薄桃色に染め上げた風は、その柔髪も軽く揺らして、見える首元の、痕ともつかぬ咬みつかれたような(あか)
涙が、落ちる。

時々肩を震わせるように歩く、三成様の元へと去っていく彼女を、俺は舞う桜とともに、心に刻み込んだ。

後藤又兵衛/たとえ火の中水の中、檻の中だって(ゆーきゃん様リクエスト)→←大友宗麟/あなたとの、幸せな思い出に変わる(夜月様リク)



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設定タグ:戦国BASARA , 恋愛 , 小石の方   
作品ジャンル:恋愛
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希望(プロフ) - 失礼します!リクエスト、させて下さい!良かったらですが、政宗様のお話をリクエストしたくて…学バサの方でリクエストしてもよろしいですか!!? (2017年6月8日 19時) (レス) id: f217a178dd (このIDを非表示/違反報告)
椿(小石の方)(プロフ) - 舞姫さん» はい!了解です。前の黒丸様と順番がゴチャゴチャになってしまうかもしれないのでご了承下さい。 (2017年4月1日 12時) (レス) id: 2a1e88c7e9 (このIDを非表示/違反報告)
舞姫 - リクエストでーす!えっと……竹中半兵衛様。明智光秀様を、出来たらでいいので、お願いしま~す。 (2017年3月25日 10時) (レス) id: f50ff2d6e1 (このIDを非表示/違反報告)
椿(小石の方)(プロフ) - はい!返信遅くなり申し訳ございません!別々で作らせていただきます。何かあればまた仰ってください (2017年3月23日 0時) (レス) id: 2a1e88c7e9 (このIDを非表示/違反報告)
黒丸 - リク良いでしょうか。弁丸、梵天丸、アニキお願い致します。 (2017年3月19日 22時) (レス) id: 892b25096f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:椿(小石の方) x他1人 | 作成日時:2016年6月27日 18時

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