笑えない、どつかれた本拠地。【白膠木簓】__extra story

▽00___頼み事 ページ18

ー白膠木sideー



目の前にいる彼女は、ハサミを持って俺と目を合わせた。






白「早まるな東雲谷A…落ち着いてや、その刃物をゆっくりこっちに渡し」

『おうおう兄ちゃん、あんたの言う事を聞くと思ってんのか……って違います』







なんや一人ノリツッコミかいな。ええと思うで、
日に日に上手くなっとるやんけ


『頼み事があります』と、ハサミを渡してくる。何となく予想は付くのだが、









『前髪切ってください』

白「ええけど……美容院行かんの？」

『行ける時間無いから頼んでるんですよ』

白「逆ギレすんなや！刃物危ないやろ！！」







わーぎゃーと騒ぐが取り敢えず要件は分かった。
彼女とて社会人。しかもイラストレーター、それなりに一つの仕事に時間がかかる。

髪を切りに行く時間も無いのは可哀想やな、








.








『簓さん……失敗だけはやめて下さいね
例えばざく切りカットとか、ジグザグとか、おかっぱとか』

白「何やっても似合うから安心し」

『それ褒めてます？』





当たり前やろ。



知らんけど。









喋ると失敗する気がするから珍しく黙って切った。途中限界が来そうになったが、彼女の圧で黙った。

めっちゃ怖いねん真顔




髪を触ったり出来るのは案外特権モンなんかな、なんて思いながら切ればあっという間。








白「完成！」









彼女に鏡を持たせてどうかと聞いてみる。









『簓さん…』







いつもよりワントーン下がった声、

え、なんかダメやった？間違えたんか！？前髪切って失敗したなんて死活問題やぞ！！！







『前髪切るの上手いですね…』

白「……お、おん。気に入ってくれたんならよかったわ……」

『私なんかこの前』






とまで言って苦い顔をした彼女に対して疑問符を浮かべた。





『やっぱ何でもないです』




ため息を吐いたので何となくわかった。




この子自分で前髪切ったら失敗したんやな…


手先器用な彼女が切るのを失敗してるところを想像すると、あかん。笑いが止まらへん。









白「またやったる、いつでも頼み」









そう言えば『ありがとうございます』と安堵したような声が返ってくる。





案外可愛いとこあるんやな





.

***
前髪を切る(レイン様)

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