真夏の夜は貴方を想う3【SS】完結 (ページ20)

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それ以上でもそれ以下でもページ20

沈黙がまた空気を凍らそうとする。
車内に流れる音楽も、
雪の音すら私には聞こえなくなった。

まるで、この空間だけ時間が止まってるみたい。

先生は私から目を離さないけど言葉は発しない。
先生の目に写ってる私は今にも泣き出しそうだった。

…先生は今何を思ってるの？

すると、

「……じゃない。」

ずっと黙り込んでいた先生が口を開いた。

掠れたような、そんな小さな声で話し出した先生の声はよく聞こえない。

「あ、あの…」

もう一度聞こうとした瞬間、

「山田は俺のことなんか好きじゃない。」

「…っ」

「…山田は、…俺の生徒だよ。」

教師と生徒、それ以上でもそれ以下でもない。

先生は私の目を見て、今度ははっきりとそう言った。

「っ…。」

わかってる…
そんなことは痛いほどわかってた。

だけど、私がただの生徒だっていうなら
こんな勘違いさせるようなことしないでよ…

「…先生は、本当に私のことをただの生徒だと
　思ってるんですか？」

「……ごめん。」

……もうこれ以上何も言えなかった。

「…送ってくれてありがとうございました。」

バンッーー

一刻も早くこの場から立ち去りたかった私は
そのまま車から飛び出した。