【名探偵コナン】もう一人の名探偵【劇場版限定】プロローグ

出会い　怪盗キッド篇 ページ8

Aが、まだ旅をしている工藤夫妻を残して日本に帰国したのには理由がある。

〔怪盗キッド〕

最近、世を騒がせている世紀の大怪盗…。日本語放送のニュースを見て以来、Aの関心は完全にキッドに向いていた。

探偵として、こいつに会ってみたい。

〔捕まえたい〕とか、そんな想いではない。ただ、彼女はキッドに探偵として会いたいと感じたのだ。

そして。ネットで、怪盗キッドが日本で新たな予告状を出したことを知った。新聞に、大々的に予告上の全文が載せられたのだ。

怪盗キッドはいつもの予告状通り、暗号によってややこしくした文面を出した。

Aはいつもの事件通り、あっさりそれを解いた。

12月24日。少なくとも世界の半分は、浮かれに浮かれまくるクリスマスイブ。そんな日が、イブではなく当日になる瞬間―――

つまり、12月25日午前0時。高級ホテルである〔レインフォールホテル〕の特別展示室で、期間限定展示されている宝石を盗みに来る。

暗号からそれを読み取ったAは、即刻工藤夫妻に日本への帰国を要望した。工藤夫妻はまだしばらく、海外を放浪しなければいけなかったため、必然と1人で、である。

1人で帰るなんて危ない、と反対する工藤有希子を押切り、工藤優作には少し笑われつつ、無理やり日本への帰国を決定した。

犯行予告のホテルを予約し、荷物を用意した。工藤有希子は、もはや諦めたかのように〔せめて泊まる部屋は最高ランクにするのよ！〕と言い切り、見事なスイートを予約してくれた。

そんな、1人では広すぎる綺麗な部屋を見渡し、Aは腕時計に目を落とした。

『午後…11時か』

あと1時間もしないうちに、怪盗キッドはこのホテルにやってくる。

いや、もう来ているのかもしれない。

『…というか。日本の警察ってこんなに馬鹿だったっけ…？』

チェックインを済ませるとき、彼女は辺りを探ったが、キッドはもちろんのこと、警察らしき人影はひとつも見当たらなかった。

さらには、先程つけたテレビの画面に

〔怪盗キッド犯行予告！警察は、暗号から怪盗キッドはこの東都タワーに、25日午前0時に現れると予測したようです！東都タワーには、キッドを人目見ようと観客が溢れています！本当にキッドは現れるんでしょうか！？〕

と熱弁する女記者の姿が映っていた。

『時間は正解だけど、場所全然ちげぇー…』

警察がこんなだと、いよいよ世も末だな。

そうつぶやいて、Aはテレビを消した。

―――
警察…

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