Impatient ページ1
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「誰か…!誰か来て!助けて…!!」
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智は手と口元を汚したまま、俺の下でふっと意識を手放した。
青白い顔が、力の抜けた首に支えられずコテンと転がるのが、生きている人のそれに見えなくて、俺はほとんど泣きそうになった。
「だれか…!」
絶叫に近い声を廊下から張ると、いちばん近い教室は2年1組で、担任の日向先生(若い女の先生だ)が、慌てて飛び出して来てくれた。
「どうしたの!?大丈夫…」
倒れている智を見て、日向先生は青ざめる。それでも、震える手で、智の身体を安全な体位に変えてくれた。
自分の手が汚れるのも構わずに、智の口元を拭いながら、呼吸があるのを確認してくれる。
「保健室に、櫻井先生を呼びに行ってくれる?」
「はい…」
立ち上がって、保健室まで向かおうとするのに、過度な緊張のせいか、さっきまで全力で走っていたせいか、足の力がカクンと抜けて、うまく歩けなかった。
「先生、オレが行くよ」
ぐっと支えるように肩を持たれて、誰かと思ったら相葉くんだった。
俺の声を聞いて 教室を飛び出した日向先生を、追ってきたのかもしれない。
「カズは大ちゃんのそばに居てあげて」
俺がよっぽど不安な顔をしていたのか分からないけど、相葉くんは、「ね?」と宥めるように言って、しっかりとした足どりで階段を降りていった。
「大野くん…大野くんわかる?」
日向先生が呼びかけたら、智はうっすらと目を開いたけど、もういいや、というふうにすぐに閉じた。
さっきの涙の流れ損ないみたいなやつが、つるりと、おかしなタイミングで流れて、日向先生を焦らせた。
相葉くんに、そばに居てあげて、と言われたのに、俺はなんにもできずに、ただ智と日向先生を眺めていた。
『また、落ちるぞ』
『一緒にいたら、死んじゃうぞ』
呻くように痛切なその声が、何度も頭の中を巡った。
俺はいつも、智の肝心な部分を知らない。
流星群の日と、まったく同じ 気持ち悪さで、智が抱えるものの大きさだけ、どんどん増して
その中身は、不明瞭なままだ。
智が、吐くほど恐怖しなければならないそれは、いったい、何だ。
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「…うん…、このまま運ぶね」
櫻井先生は信じられないくらい速く駆けつけた。
智の様子をサラリと見ただけで、「大丈夫だよ」と、気が動転している俺や日向先生に声を掛けた。
智は、朦朧とした意識の中で櫻井先生を見つけ
また怖がって、まつ毛を震わせて目を背けた。
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きんにく(プロフ) - あっちゃんさん» →もしかしたら誰かの気を悪くしてしまうかもしれなかったお話ですが、こんなふうに温かいコメントを、時間が経っても頂けることを本当に有り難く思います。なんだか下手な解説みたいになっちゃいました。読み返してみると恥ずかしい所だらけなんですけどね(笑)あはは (2021年5月6日 18時) (レス) id: bf5ab865ef (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - あっちゃんさん» ガバっと素直に詰め込んでみたお話です。こんなふうに生きてゆけたならそれはそれは眩しいのではないか、とゆう想像の羅列です。完璧に無邪気であることの尊さに憧れながら、そうはいかないことへの失望までを、人生のうちに一度は文章にしてみたいなあと思っていました (2021年5月6日 18時) (レス) id: bf5ab865ef (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - あっちゃんさん» あっちゃんさんお久しぶりです!読み返して頂いて本当にありがとうございます。ピアニッシモにコメント!?とめちゃくちゃビビりましたが、あまりにも温かい言葉に私のほうが泣きそうになりました(笑)とても嬉しいです。ピアニッシモは、私の憧れみたいなものを、→ (2021年5月6日 18時) (レス) id: bf5ab865ef (このIDを非表示/違反報告)
あっちゃん(プロフ) - →思うように過ごせていることを切に、願いたいものもです。回りの雑音なんて気にしない生活を送らせてあげたい。とそんなことを思いながら。長々と失礼しました。これからも素敵なお話をお待ちしてます。いつもありがとうございます。 (2021年4月29日 14時) (レス) id: 178db8b66c (このIDを非表示/違反報告)
あっちゃん(プロフ) - →最後の章は。もう涙が止まらなくて。小説を読んでこんなに泣いたことなかったなあ。…これを書いていても涙してます(´;ω;`) 。そんなお話を書けるきんにくさんが素敵!現世の彼が。同じようなことにならなくてほんとによかったと思うと共に休止中の今を自分の→ (2021年4月29日 14時) (レス) id: 178db8b66c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きんにく | 作成日時:2020年6月7日 0時