その約束、すでに時効【凪 誠士郎】

18 ページ18

.





凪と別れてから一週間が経った。










運が悪いことに、



サッカーのアプリの広告モデルとして、私と、





そのアプリとコラボしている凪くんが選ばれてしまった。











今は正直、会いたくない。








きっと凪くんも同じ気持ちだ。





私はその仕事を何度も断ったのだが、なぜかマネージャーから、







「なんか断るって意見全く通らなくて…」






と言われ、何故かと思いそのゲームに関わっている会社を見ると、




提供の八割が御影コーポレーションの提供だった。








そこからはもう、あっ(察)となり、我慢せざるを得なかった。












そして当日。






スタッフ「Aさん入りまーす！」







と言われながらセットのある所へ着くと、既に凪がユニフォーム姿でスタンバイをしていた。








私も準備が出来ているので、他人行儀に凪に対して軽く頭を下げて挨拶をし、








そのまま、一言も話すことなく撮影が終わった。







夕方に始まった撮影は、終わった頃にはもう夜になっていた。









なんとなくタクシーではなく、歩いて帰りたい気分だったため、







変装をしっかりして、夜道を歩き出した。









上を見ると、あまり星が見えない夜空の中に、煌々と輝いている月が見えた。











何故か、涙が込み上げてくる。









こんなにも、苦しくて、切なくて、辛い。







好きの意味がずっと、分からなかった。




いや、分かっていながら、認めたくなかった。




本当は、中学の時から自覚していた。





どんどんかっこよくなっていって、サッカーを始めて、私から離れていく彼を縛りたくなかった。






22歳の誕生日に、一番に駆けつけてきてくれて、







約束を覚えていてくれて、心底嬉しかった。






でも、弱い私は、また好きの意味を分かっていないフリをした。







弱いから、口約束のようなものに逃げたのに、





またその約束から逃げてしまった。









凪くんのことが好き。









もう、逃げちゃダメなんだ。



















気がつけば私は、御影選手に電話をかけていた。

19→←17

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す