Quite Talk

ジンクス(すぐ近くにいる ki) 3 ki ページ8

呼んでも振り返らないAに
さすがに焦る。



でもまだこの子との話が終わってねーし
まずは冷静に

「とにかく、ごめん。俺は彼女しか好きになんねーんだ。絶対」

それだけはちゃんと伝える。

「…わかりました」

ちょっと涙目だったけどその子が頷いてくれる。



「ちょ、俺、帰るわ」



慌ててるのがバレないように
出来るだけ普通に片付けをする。



Aはぜってー誤解してる。

しかもアイツ会社に携帯忘れてたのかよ。
そりゃ連絡こねーわけだ。

なんかあったんじゃなくて良かったけど。



「…北山さんの彼女って、Aさんですか？」



その子が言う。



「は！？」



一応隠してたつもりだった。
いまめちゃくちゃ内心焦ってるしAの事で頭がいっぱいだったから声が裏返る。

「北山さん、Aさんと話してる時とAさんの話してる時だけ若干違うんで」

その子に指摘されてびっくりする。
気をつけてたつもりだったのに。



「でも、分かります。私、先輩たちの中でAさんだけは大好きなんで」



なんて、人付き合いの悪いその子からは珍しい発言。

そーなんだよ、
Aは最高なんだよ。

誰にでも好かれる所もすげー好きなんだよ。



「ごめんなさい、あと戸締りしとくんで。北山さんはAさん追ってください」

その子が言ってくれる。



「…や、多分アイツもう今日は会ってくんねーから」



さっき出張って送っちゃったしそこは理解してくれるはず。

俺も準備しねーと。



ただもしかしたら下に居るかもだし
電話なら出来るから。



「それならスグ連絡してください。…って、私が言えた義理じゃないんですけど」



その子が涙目になってるから気づく。

あ、これっていまこの子泣きたいんだな、って。



なんて
この子に気を遣ってる場合じゃねーんだけど。



とにかく

「悪い、さんきゅ」

荷物を適当に纏めて走り出す。



ビルの外には当然いないし
Aに電話を何回掛けても出ねーし。



電話を掛け続けてる合間にLINEが来た。

A別れよう。
荷物は宏光が仕事中に運ぶから。

そしてそのLINEを最後に電話が繋がらなくなった。



ブロックと着拒されたな。



ため息をついてうちに帰ると
カレーが出来てて。

前に絶賛したカニサラダもあるし
ビールも冷やしてくれてて部屋も綺麗。



「………最悪」



何が、って俺が。

こりゃ振られても仕方ねーか。




………でも終わらせるつもりなんて全然ない。

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