サイボーグな彼女 9

はじめての。2 ページ41

『お疲れ様』

現場について車を停めた後
北山さんはタバコ経由で控え室に行くと言うので
先に控え室に向かいながら炭谷さんに電話をする。

もしもし、じゃなくていきなり『お疲れ様』って言うのは炭谷さん流らしい。



「お疲れ様です、電話出られなくてすみません。いま大丈夫ですか？」

『大丈夫。折り返しありがとう。雑誌の入稿前に確認なんだけど…』

電話の用件は入稿する前に気づいてもらえた文字の修正と言い回しの確認だった。



文字の修正は完全にこちらの見落としだ。
良くないな。

気が抜けてるのかな。
もっと仕事に集中しなきゃ。



『しつこく電話掛けたのは理由があってさ』

「はい」

『同じゼミにいた俺の1つ上の先輩が同じ広告業界に居るんだけどさ。企業CMでキスマイの起用の検討してるって聞いたから是非会ってみない？って話なんだけど』

聞くとなかなか有名な広告会社で企業も有名。
その先輩の名前もゼミの資料や涼さんの話で聞いたことがある人だった。



「ホントですか？」

『もちろんまだ決定じゃないけど。顔繋ぎくらいは出来るし今日の夜どうかなと思って』

「えっ…」



随分急ですね。
私は確かに今日大丈夫ですけど。



『Aちゃんの立場だとまだそこまでじゃないだろ？もし都合つけば武田さんも来れないかなと思って』

「確認してみます」

武田さんの予定どうだったかな。
タブレットを立ち上げてスケジュールを確認してると

『でさ、顔合わせの後LINE来てると思うけどゼミの飲み会あるしAちゃんも一緒に行かない？その先輩も来るし』

そう涼さんが言う。



だから私用スマホにも掛けてきたんですね。
半分仕事の話じゃないから。



これ、今が言うタイミングかな。

「実はいま私にそういう所に行くのをあまりいい顔しない人が居まして…」

『え？』

あぁー彼氏って言いにくい。
何か恥ずかしくて口に出せない。



「男性のいる食事会とか、行くって言うと嫌がるんです」

『え？北山さん？』

炭谷さんが聞いてくる。



そうなんだけどそれは言えない。



「違います」

『ふーん。彼氏ってこと？』

「……そうです」

ものすごく恥ずかしい。



けど北山さんが嫌な思いしなくていいように。
いま私が大切なのは北山さんだから。



『へぇー。…ま、いいや。とにかく今日会えるか武田さんに確認してくれる？』

「分かりました」



電話を切った後調整した結果今日会うことになって
夕方から北山さんとは別行動になった。

はじめての。2 ki→←はじめての。1 ki

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す