綾辻行人の助手2 (ページ6)

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38話ページ6

綾「捕まる？」

男性の言葉に綾辻先生は反応した。
そして冷たくこう云う。

綾「その心配は必要ない。『殺人探偵』に罪を見抜かれた者が行く場所は監獄ではないからだ。__俺が何故『殺人探偵』と呼ばれているのか、知らないのか？」

辻「綾辻先生」

綾「辻村君。その男を放せ」

辻「併し」

あ「…巻き添えは厭でしょう？」

私がそ云い、辻村さんが躊躇った瞬間の隙を付いて男性は跳ね起きた。
突き飛ばされた辻村さんは壁に激突し、私は辻村さんを支えようと近付いく。
その間、綾辻先生は入口の上部を見ている。

「こんな筈じゃない！何かの間違いだ！絶対にバレないとアイツはそう云っていたのに！」

あ「…ステンドガラス、綺麗なのにな」

男性の言葉を聞き乍ら私はボソッと呟いた。
私の視線の先には皹が全体に広がっているステンドガラス。
様々な色があって光に当たる時は神秘的だ。
そんなステンドガラスが__重い硝子の板が落ち、男性の肩から胴体までを両断した。

あ「…はぁ」

鮮血が辺りに飛び散った。
綺麗な硝子が細かく降り注いだ。
男性の喉から何とも云えない音がでた。
…そして男性は胸に穴を開かせ乍ら倒れる。

「し…死んだ……？」

あ「死んだね」

ガムテープで修正されていたステンドガラスはこのタイミングで割れるのは可笑しいことだ。
それなのに偶然、全くの偶然で其れが割れた。
そして偶然で男性に刺さり、死んだ。
__そう、全くの偶然で死んだのだ…謂わば事故死である。

「犯人が……事故、死…？」

事故死、誰もがそう云うだろう。
そして誰が見ても完全なる事故死なのだ。
__事故死が起こる理由がなければ。

綾「…秋夢、血が付いてるぞ」

そう云って私にハンカチをくれる綾辻先生。
私は「有難う御座います」と云ってハンカチで顔に付いた血を拭く。
その間にも傍観者__学校の先生達__は唖然としている。
殺人探偵の本当の意味が判ったのだろう。

辻「先生…綾辻先生、貴方は、また__」

綾「これは自然現象だ」

そう云い放った綾辻先生の顔には表情は無い。
まるで当たり前の事かの様に言葉を続けた。

綾「生の隣に死が在るように、願いや意図とは関係なく起こる必然的な現象。そこに俺の意志は介在しない。__俺に罪を暴かれた犯人は、百％絶対に何らかの形で事故死する」

そう云った先生。
__綾辻行人。
__特一級危険異能者。
殺人探偵と呼ばれる探偵。

「犯人を『殺人』する探偵……」

辻村さんがそう呟き、綾辻先生を睨んだ。