【マギ】愛書家少女は恋を知らない。【ジャーファル】

42ページ ページ46

｢え…これほんとにお前らが作ったの…？｣


並んだ二つの砂城を指さし、呆然としている皆さんになんでもない顔で返す。


『｢そうですが、どうかしました？｣』


うわ、ハモった最悪……

しかし向こうは更に完璧にハモらせてきた。


｢｢｢｢｢二人揃ってハイクオリティすぎだろ！！｣｣｣｣｣

『｢えっ｣』


う、うーん…まぁ完成品は自分でもそこそこの出来だとは思うけど…

どっちが上手いか審査してもらうために呼んできた皆さんは、砂の王宮に駆け寄ってじっくりと見る。


｢え、やばくない？ジャーファルさんのやつ、ここの斜面どうなってるの！？｣

｢物理的に無理よね！？｣

｢おい見ろよ！ミュセル、木の本数まで完璧だぞ！｣

｢さ、さすがだな…｣

｢いやジャーファルも窓とか完璧だし…
お前らなんでこんなに細かく覚えてんだ…？｣


上を向いた全員とパッと目が合う。

えぇ…？そんな、なんでって言われても…



『｢自分達の住んでる王宮なのに覚えてない方が不思議なんですが…｣』


｢｢｢えっなにこいつら怖っ｣｣｣

｢覚えてないのが普通だからね、うん。｣

｢そりゃ大まかにはわかるけど木や窓の個数はな…｣


うそ、王様とか自分の城なのに覚えてないの！？

覚えてるのが普通じゃないの！？


……って違う。本題はこれじゃなかった。

重要なのは上手いかどうかじゃなくてどっちが上か、である。

結果によっては私の３日間が地獄に変わる。


『……というわけで、そろそろ判定お願いしていいですか？』

そう答えを催促すれば、皆さんは各々うーんと悩み始めた。


｢……ジャーファルさんかなぁ｣

｢…ジャーファル殿に一票｣

｢んー、ミュセルね！｣

｢…俺もミュセルだな｣

｢そうだなぁ………ジャーファルかな！｣


『えぇ！？』

｢あはは、３日間こき使ってやりますよミュセル｣


ま、負けた！？ありえないんですけど！？

み、３日もブラック企業に引きこもりだなんて…！

地獄も地獄、叫喚地獄じゃない！


横で勝ち誇ったように笑ってる閻魔大王をキッと睨む。

すると彼はなにを思ったか、少しだけ笑って言った。


｢ミュセル、今日楽しかった？｣

『はぁ？……そうですね、久しぶりに楽しかった…かもしれないです。こんな結果じゃなければね！』

｢そ。じゃあさっきの約束なしでいいから。｣

『え？』


思わず目を見開く。

な、なしでいい……って…



『……か、貸しにでもする気で…？』

｢あ？してほしいのかよ｣

『いえ結構です。』

続編のお知らせ→←41ページ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す