【マギ】愛書家少女は恋を知らない。【ジャーファル】

40ページ ページ44

キラキラと光る海の方を見れば、楽しそうに遊んでいる人たちが見える。

ヤムライハさんとシャルルカンさんは海上で戦闘中。

ピスティさんとスパルトスさんと王様はビーチバレー中。


若干笑えない要素も混じってる風景を見ながら、私は思わず考えた。


『………これ、こっそり帰ってもバレないですよね？』

｢……同じこと考えてた…｣

『やめて下さい気持ち悪い』

｢あ？｣


睨んできたジャーファルさんはもちろんスルーです。

そうよね、２組ともあんなに勝負に熱中してるし。

うまくいけば涼しい天国の図書館に帰れるんじゃない！？


思い立ったが吉日。私はバッと立ち上がった。


｢なに、ほんとに帰るの？｣

『帰ります。帰るに決まってます。
これ以上ここにいたら本の禁断症状で死ぬ気がしますので。』

まぁ半分嘘ですが。実際いろんな理由で死ぬ気がします。


『あなたは帰らなくていいんですか？』

｢……一応ちゃんと見てます。｣

『そうですか。相変わらず真面目ですね。
それではよき悪夢を。』


最後にそう一言加えてクスリと笑う。


やっと帰れる…！

そんな嬉しさを胸に、なおも眩しいくらい輝いている海に背を向けようとしたその時。

なにかが私の顔めがけて飛んできた。


バシィンッッ


｢うわ！？｣

『いっったぁ！？』

｢ふふふ……ミュセルたーん？どこ行くのかなぁ？｣


当然、私なんかの反射神経では避けるなんて無理で。


私の顔に直撃して跳ね返り、そのまま地面を転がったのはバレーボール。

そして少し離れたところにいるのは、サーブの構えのポーズをしたピスティさんだった。


え、ちょっと待って…まさか私の顔面めがけてサーブ打ったの…？


『……ジャーファルさん、少々ビーチが赤く染まってもよろしいでしょうか？』

｢よくないですけど！？なに物騒なこと言ってるの！？｣

｢あはは、逃げようとしたミュセルたんが悪いっ！｣


いや知らないですよ！

勝手に連れてきて逃げようとしたら殺人サーブとかどこの拷問よ！


｢逃がさないわよーミュセル！今度は私の水鉄砲も飛ぶからね！｣


いつの間にか横に来て言うヤムライハさん。

天才魔導士の水鉄砲も付くとか本当にどこの拷問だ。

私はもうヤケクソになってその場で叫んだ。



『あーもう！いいですよわかりました！！
こうなったらとことん楽しんでやりますよ！
その前にあんたら砂浜に埋まっていっぺん死ね！』


｢やばいミュセルが壊れた！！！｣

41ページ→←39ページ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す