【マギ】愛書家少女は恋を知らない。【ジャーファル】

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｢ミュセル！｣

そんな声がして本から目を離して顔を上げる。

すると目の前に鮮やかな青い髪がちらついた。


『あら、ヤムライハさん。
ちょうどよかった。もう少ししたらあなたの研究室に行こうと思ってたんですよ。』

そう言うとヤムライハさんは不思議そうに目をぱちぱちさせた。


『新しい魔導書、20冊ほど届いていました。』

｢え！？ほんと！？｣

『ええ、今回は水魔法に関する物も多かったです。』


さっき読んだ魔導書を積み上げながらそう告げると、ヤムライハさんは苦笑して言う。



｢もう全部読んだの？相変わらず速いわね〜｣

『これでも図書館長ですしね…
水魔法に関するのはこれだけです。
あと、こっちはマグノシュタットで行われた頭髪を伸ばす魔法の研究結果です。』

｢えっ｣

『ヒゲを伸ばす研究、されてましたよね？
その参考になるのではなるのではと…』


パラパラと捲りながらそう言うと、ヤムライハさんはバシッと私の手を両手で掴んだ。

一瞬ビクッとして思わずまた顔を上げる。


｢ミュセル……｣

『は、はい…？』

｢あなたってほんとにいい人ね！！
剣術バカとかには散々言われたのに……！｣

『え？えっと……』


あぁ…確かに言われてたわね……



｢ありがとう！また魔法作るときは意見聞かせてね！｣

『ええ、いつでもどうぞ。』


それを聞いてヤムライハさんは嬉しそうに笑った。


私は魔導士ではないから、もちろん魔法は使えない。


けれど図書館や資料庫にある書物を読むということは、必然的に魔導書も読むわけで。

結果、魔法の知識だけはあるので、時々ヤムライハさんの魔法作りを手伝っている。



｢じゃ、お言葉に甘えてまた来るわね！｣

『了解です。魔導書、１人で運べますか？』

｢ええ！これくらい力魔法を使えば余裕よ！｣


ヤムライハさんは杖を少し動かして、魔法で魔導書を持ち上げる。

いいなぁ魔法って…ほんと羨ましい……


ふわふわと魔導書を浮かせながら手を振って図書館を出ていくヤムライハさんに小さく頭を下げて、時計を見た。



…もうそろそろ図書館の閉館時間ね。

図書館にはもう誰もいないし、閉めちゃっていいかしら……


ううん、ダメよ。まだ誰か来るかもしれないし。

そう思って１度持った鍵を机に置く。

その瞬間、図ったように誰かが図書館に向かって歩いてくるのが見えた。


ほら、やっぱり誰か来た。


しかしそれがあいつだと確認できた時点で私は再び鍵を持った。


前言撤回。閉館です。

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