【Kiramune】たった1人のシンデレラ�供敍�野自由】

071 ページ24

.


入野さんとは暇な時間があえばちょっとでも電話をしているので、会えなくても以前ほどの寂しさを感じることはなかった。

ようやく全ての講座でテストが終わり、私としては忙しい時期はもう終わりだ。
入野さんは、もうすぐそこまで主演の一人を演じるミュージカルの上演が近付いて来ているため、近頃は稽古と声優のお仕事でとても忙しそうである。


「Aおかえり、手紙来てたよ」

「ただいまー。なにこれ？」


仕事を早上がりした母が、私宛の郵便物を受け取っていてくれたらしい。

すぐさま差出人名を確認する。


「ああ、これ、同級生の名前だよ」


内容は同窓会を催すから来て欲しい、とのこと。
まだ高校を卒業してから一年も経過していないが、今回の同窓会は中学校のものらしい。

テストも終わったばかりだし、中学時代の友達には久しく会っていない。
折角だし、参加しようかな。


「いいじゃない、行ってきたら？」

「うん、そうしようかな」


開催日は約二週間後。
入野さんと会う約束をしている一日前だ。

『参加』の方に丸をして、明日外出する際に郵便受けに入れようと思い、鞄の中にしまっておくことにした。


それにしても、中学の同窓会というなら、あの人がいるはずだ。

自然消滅してしまった元彼。
名前は大谷洋介[ｵｵﾀﾆ ﾖｳｽｹ]という。

でもきっと、大学生になって彼にももう新しい彼女でもいるだろうし、いなくてももう私のことは忘れていてもおかしくない。
付き合っていた期間はさほど長くなかったのだ。心配する必要はないだろう。


自室のベッドに寝転んだところで、ちょうど携帯が着信音を奏で始めた。


.

072→←070

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す