【Kiramune】たった1人のシンデレラ�供敍�野自由】

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「もしもし？」

『あ、俺だよ、元気？』

「オレオレ詐欺ですか？切りますよ、入野さん」

『わかってんじゃん！』


まあAが俺の声わかんないわけないか、俺のこと大好きだもんな！と謎にテンションのお高い入野さんを無視。


「もう、アポ無しはやめてくださいって言いましたよね？」

『急に話したくなったんだからしょうがないじゃん』

「ちょうど暇だったからいいですけど・・・」


入野さんは今、舞台のリハーサルの休憩中らしい。
休憩中なのに休憩しなくていいんですか？と尋ねれば、『A補給』という答えにならなき答えが返ってきた。

昨日は電話できなかったから私も声が聞けて嬉しくて、自然と笑顔になってしまう。


『A、ニヤニヤしてんの？』

「えっ、し、してないですよ！」

『うそ。声でわかる』


『声聞くだけでニヤニヤしちゃうなんて、次会ったら溶けるんじゃないの？』なんて言われて、また笑みがこぼれる。


『そう言えばA、ミュージカル観に来るでしょ？』

「もちろんです。東京公演を友達と、千秋楽は一人で観に行きますよ」

『関係者席の券あげようと思ったんだけどもう遅いよね』


もっと早く言いたかったけど色々あったからさ、と零す入野さん。


私が関係者席に座るのは、入野さんと正式にお付き合いしていることを世間に公表してからだと決めていた。

なぜなら、“入野自由が出ているライブやミュージカルの関係者席に、毎回同じ女性が来ている”なんてこと、察しが良いファンの方はきっと気付くだろう。
そうなると、二十歳になる前に世間に知られてしまう可能性もあるし、入野さんにも危害が及ぶ可能性があるから。


だから私は、あくまでまだ一人のファンとして、入野さんを応援していたいのだ。


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