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「どうぞ」



持ってきた本をお酒が注がれたグラスの横に置く。


店内には、私と鬼龍さん。ママと常連さんのみで、平日の真ん中は大体客が少ない。



「お、ありがとさん」



カウンター越しにそれを手に取り嬉しそうに頬を緩ませる紅郎さんに吊られて自然と頬が緩む。

何年も自室に置かれていた私の本をパラパラとページを捲る様子は新鮮で、気恥しさから熱が顔に籠る。



なんとなく、本当になんとなく。


私が触れていた世界に触れようとしてくれている。そんな感覚になってしまう。




「へぇ・・・、漢字の意味とかも書かれてんだな」


「読んでて勉強になるし、結構面白いですよ」


紅郎さんはなにかを探すように指で字をおっているが、段々と背中が丸くなり顔が本に近づいていく様子が可笑しくて気付かれないように小さく笑う。

それから私自身も身を乗り出して本を眺める。



「なに探してるんですか?」


問えば集中しているせいか、ワンテンポ遅れて返事が来る。

「・・・〖紅〗って漢字をな。俺の名前にもなってるからよ」




あったあったと見つけた様子で嬉しそうに読み始めるも、次第に表情が曇っていき私もと、開かれた本へと視線移し読み始める。


「・・・女性のって、・・・ふふっ」


「嬢ちゃん、笑ったな」


「あはは、いや。紅郎さんに女性らしさはないですよ。ただ、ここの意味はあってそうですよね」



本の文面を指させば、紅郎さんの視線がそちらへと移るが、すぐに逸らす。


「・・・まぁ、確かに〖紅一点〗とか〖口紅〗って使うからな」




恥ずかしそうに話をそらす彼をつい、可愛いと思ってしまう。本人には決して言えないが。



「嬢ちゃんのおすすめは、何かあるか?」




「私は・・・、和服とか和楽器とかのページが好きですね。あ、あといろは唄も」



目次を開くとその場所を指でさしながら彼に教える。


「へぇ・・・。そういや、神崎達もこれが読みたいって言ってたんだ。貸してやってもいいか?」





迷うことなく頷けば、ありがとなって満足そうに笑う。








「A〜」





ふいにママから呼ばれた。

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あるびおん(プロフ) - Mashiro Lioさん» コメント頂き有難う御座います。とても褒めてくださって、感謝しかないです!適当な内容にしたくない為に更新は遅くなりがちですが、気長に見てくださると助かります。今後のストーリーの展開も、予想外になる可能性がありますがお付き合い下さいますと嬉しい限りです。 (2020年11月7日 18時) (レス) id: 8484e311ec (このIDを非表示/違反報告)
Mashiro Lio(プロフ) - 昨年度から拝読しております。本当に素敵なお話で、初めて見たとき、つい読み入ってしまいました。地の文の描写が全体的に綺麗で、ストーリーも続きが気になって、もっと伸びろ!と毎度思います。これからも、ご無理のないように更新頑張ってください。 (2020年10月26日 7時) (レス) id: 97626e8ffb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あるびおん | 作成日時:2019年2月12日 7時

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