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▼.甘えたがりな君 ページ1

「太宰の阿呆!!」


そう叫んで彼奴の部屋を飛び出して幾日過ぎただろうか。
腹が空腹を主張している。
飛び出せば探しに来てくれるかな、と最初は期待もしていたけれど。
彼奴は来る者拒まず去る者追わず、そんな奴なのだ。
だから私を追っては来るはずがないのだった。
私は河川敷に寝転んで、清々しいほど澄み渡った空を見上げた。


「……はあ……」


自然とため息が溢れた。
今更、あんな奴に期待した私が悪いのだ。
変人だし、すぐ死のうとするし、どうしてあんな奴が飽きもせず私の相手をしてくれるだろう。
そうだ、期待した私が悪い。
もう彼奴なんかどうでもいい。


「太宰なんかどうでもいい!!」
「おや、そうなのかい?」


私の大きな独り言に返された言葉に、声に、私はぴしり、と体が硬直した。
何故、隣から返事があったのか。
それは誰の返事なのか。
全部理解できる。
私は嬉しい筈なのに、今は何故か嫌な予感がしてしまうのだ。


「探すのに苦労したんだよ?
終いには乱歩さんに協力までしてもらって……」


隣に座っていた太宰は私を散々探したのだと言いながら、私を見下ろして、いつもの悪巧みの顔になっていく。
何をする気だ、こいつは。
本能的に、太宰に背を向けるべく横を向いた。


「ねぇ、本当に私のこと、どうでも良いとか思ってるのかい?」
「……っ、当たり前でしょ」


私がそう返せば、そう、と素っ気ない返事がされた。
ほら、そういうところに愛想が尽きたのだと告げようとしたとき、ふと日の光が何かに遮られた。
何だろうと思い、仰向けに戻ろうとすると、至近距離に太宰の顔があった。
つまり、押し倒されている、状態。


「……へ、」
「そんなこと言わないで」


そういう太宰の顔は真剣そうで、私は思いきり戸惑った。
こいつ、こんなことをする奴だっただろうか。
私は目を見開いていると、太宰は私の頬を撫でた。


「ねえ好き。
好きだよ。
だからお願い、もう一度、好きだと言ってくれ」


好き好き、と連呼する太宰に、顔が熱くなってくる。
ああ、こんなのでときめく私も大概の阿呆なのだ。
恐る恐る太宰の背に手を回して、今は甘えん坊な太宰を抱き締める。


「……うん」

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硝子屋(プロフ) - 猫また猫さん» 了承ありがとうございます。リクエストですね、少々お待ちください…… (2020年2月24日 23時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - すみません夢主ちゃんと社長は結婚していない設定でお願いします (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - 硝子屋さん» リクエスト失礼しつれいしますね!!福沢社長で子どもを預かる話をリクエストしたいです社長と夢主ちゃんは結婚している設定で (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
- あ、全然混浴でなくても大丈夫です!無理をさせてしまいすみませんでした (2020年2月24日 15時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
硝子屋(プロフ) - 乱歩信者さん» リクありがとうございます!少々お待ちください…… (2020年2月20日 21時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:硝子屋+ソーダ | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年1月25日 6時

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