泣き顔マニア ２

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「遥さん、指輪は……？」





思わず裕太の存在も忘れてそう口にしてしまうと
困ったように笑って、

"だめになっちゃった"

って。




「え？どうして…？」


「んーまぁ色々あったんだけどね…。
でも仕事はもとのとこに戻るつもりもないし
心機一転できるし、今凄くスッキリしてるよ」





きっとそれは本心で
本当に全てが解決したかのような笑顔だった。





「ごめんなさい、遥さん。
俺ら急いでるから行くね」





今まで黙ったままだった裕太が口を開いたかと思うと
私の腕を引き、
じゃあ元気で、って遥さんに頭を下げて
振り返ることもなく通り過ぎて歩き始めた。





「ちょ、裕太？」




不自然なほど冷たい対応にさすがの私も困惑しちゃって
先を歩いてた裕太を追い越し…………、






「裕太……………、」






その顔は今にも泣き出しそうで
苦しそうで、見てられないほどだった。





「……ごめん、チャーハン食べ行こ」


「チャーハンどころじゃないでしょ…？」


「チャーハン食べたいの」


「うそ、チャーハン食べたいって顔じゃない」


「は？チャーハン食べたい顔だし」





チャーハンチャーハン連呼しすぎて
なんだか色んな気持ちを通り越して可笑しくなってきた。

もう一目見ただけで分かっちゃった。




どう頑張っても、どう踏ん張っても
裕太のこの遥さんを想う気持ちには
私は勝てないってこと。






「チャーハンじゃなくて
遥さんのとこ行ってきなよ……」





これだけ遥さんと離れてても駄目だった。

これだけ裕太と一緒にいて
知らない一面を見せてきても駄目だった。





「………っ、
もう本当に会えなくなっちゃうよ？！」





裕太は身長が高いから
肩を掴んで揺さぶれないから
腕を掴んで………、力いっぱい掴んで。





「私は、大丈夫だから……！」




もう泣かないって決めたからなのかな、
こんな場面でも涙は出なくて助かった。

真っ直ぐ強くそう言うと
裕太は人目もはばからずに、私を抱きしめてくる。





「…………ありがと、」





きっと私は無意識に
裕太の香りと体温を忘れないように、目を閉じてた。

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